「中国発 財経」

穴だらけの環境汚染観測ネットワーク

排出企業をオンラインで監視も、法令の執行に限界

バックナンバー

2009年5月11日(月)

1/4ページ

印刷ページ

“天網”怎様疏而漏

財経記者 于達維

浙江省台州市の環境保護局情報センターに勤務する蘇さんの仕事は、コンピューターディスプレーの画面をチェックすることだ。この小さな画面の上で、台州市内にある93カ所の重点汚染源の排出状況をすべてモニターできるようになっている。

 「これは、ある工場の廃水です。表面が泡立っているのは水処理施設が正常に機能しているということ。このボタンでカメラの向きを変えれば、設備の周辺も確認できます」。画面を指さしながら、蘇さんはそう説明してくれた。

 浙江省内の重点汚染排出事業所1452カ所のすべてで、このようなオンラインによる監視が可能になっている。浙江省環境保護局副局長の方敏によると、中央政府の環境統計の対象に組み込まれている重点汚染排出事業所には省、市、県の3段階からなるネットワークシステムが構築され、重点汚染源を全天候かつリアルタイムで観測している。

 浙江省だけではない。全国の汚染源をカバーする同様のオンラインネットワークが、昨年末から続々と運用を開始している。

世界最大級の汚染観測システムが稼働

 今年3月に開催された「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の期間中、環境保護省副大臣の張力軍は、次のように明らかにした。

 「環境保護当局の能力を強化するため、中央政府は34億元(約476億円)を投じて環境汚染源のオンライン観測システムを構築した。全国の重点汚染排出企業をカバーする『天網』の完成により、これまで環境監察員が毎週、毎月、または季節ごとに1回という頻度でしか測定できなかった排出口を、24時間チェックできるようになった」

 しかし正念場はこれからだ。肝心なのは、この巨費を投じた世界最大級の環境観測ネットワークをいかに“お飾り”に終わらせないかである。

 中国の環境保護当局は長年にわたって弱い立場に置かれ、人手も予算も不足していた。環境汚染の爆発的な拡大に直面する今、その監視能力は現実に追いつかなくなっている。

 インターネットと自動観測技術の進歩を生かし、従来の人手によるサンプル調査を補うのは、環境保護当局にとって必然的な選択だった。1999年11月、当時の国家環境保護総局(現環境保護省)は上海、石家荘、大連、長春、ハルビン、蘇州、杭州、咸陽、蘭州で汚染源の自動観測試験を行うことを決定した。

 2001年に発表した第10次5カ年計画の環境保護計画では、全国の重点都市で地域の汚染負荷の65%以上を占める企業を対象に、排出ガスや排水のオンライン観測装置を設置するよう求めた。

 第1段階では、中央政府の監督下にある1万8000社に観測装置を導入し、第2段階では省政府の監督下の23万社への導入を完了するとした。計画が予定通りに進めば、汚染源の自動観測システムは一応の完成を見ることになる。

 自動観測システムの効用は、改めて言うまでもない。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック


このコラムについて

中国発 財経

「財経」は1998年創刊の経済雑誌。隔週刊で、発行部数は約10万部。創刊直後から上場企業の粉飾決算や株価操作などの独自スクープを連発、当局による検閲や報道規制が残る中国で、権威になびかない“硬派”の経済情報誌としての評価を確立した。経済政策や金融分野に強く、中国のエリート官僚や企業経営者の必読誌となっている。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン