• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

武器輸入と誘拐ビジネスから、ソマリア軍閥は足を洗えるか?

ソマリアに続く“武器街道”を行く(6)

  • 吉田鈴香

バックナンバー

2009年5月12日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 前回、取材旅程も終わる頃、ジブチのシェラトンホテルでただならなぬ雰囲気を漂わせた男性を見つけた、と書いた。その時、ソマリ・ビジネス・コミュニティーのアドバイザーをしているアブドゥラーマンと会う約束をしていた筆者だが、男性の素性が気にかかってしかたがない。

 …やがて、こちらに近づいて来たアブドゥラーマンが、男性と筆者とを交互に見ながら「彼を紹介しよう」と言ったのだった。男性と筆者は握手をし、互いにファーストネームを名乗った。本名は明かせないため、仮にB氏としよう。

 アブドゥラーマンは、「僕のいとこだ。モガディシュから来ている」と言う。B氏はにこやかに「モガディシュに来て我が家に泊まっていい」と言った。

ソマリアの首都、モガディシュから車でジブチに到着した難民一行。手に持っているのは彼らの全財産だ
画像のクリックで拡大表示

私兵7000人を擁する軍閥の長

 「え、モガディシュに行けるの、泊めてもらえるの?」と、思わずおうむ返しに聞いた筆者に、B氏は「自分は最大クラン(ソマリアの軍閥)の長だ。兵を7000人持っている。君を守る力がある」と胸を張った。

 なるほど、これが互いに覇を競い合って殺戮を繰り返していると言う軍閥の長か、とB氏を見つめ返した。威圧的な気配、かすかな後ろ暗さ、大きな体躯、上唇の傷、それにアイロンの利いたシャツ。富と権力と仲間への背信とが混じり合っているかのようだ。

 アブドゥラーマンが用を済ませて去った後、筆者とB氏はしばらく話をした。彼はロジスティック業と建設業など、海外を飛び回るビジネスをして兵士を養っていると言う。

 「やっとエチオピア軍を追い出した」と聞いた時、筆者はとっさに、この人物が、反米のアル・カイーダ系と言われているイスラム法廷連合の過激派に協力した軍閥かと思った。しかし、次の氏の言葉でそれは打ち消された。「アメリカに随分協力してきたのだが、裏切られた」。

 ソマリアの内戦は、勢力がはっきり分かれた戦いではない。同盟と裏切り、外国亡命、米国とエチオピアの介入が繰り返されてきた。そのため、一体誰が悪人で誰が被害者なのか、容易に色分けできないのである。B氏はどんなスタンスで内戦を戦ってきたのだろうか。ここはB氏の話を黙って聴こう、と腹を決めた。

 以下は、B氏の話である。

当初、ブッシュ大統領は自分と密接な関係にあったが、途中から引いていき、去年の終わりにはすっかり音沙汰がなくなった。オバマ政権になってからは、米国とは一切コンタクトがなく、彼らが何を考えているのか分からない。
エチオピアを追い出した。ソマリアはソマリア人のものだ。
自分はソマリアの王であり、モガディシュの北を治めている。全域を取り戻したとは言い切れず、悔しい。
コミュニティーの人々から頼まれているので、自分には彼らを守る義務がある。力が必要だ。
外国とソマリアを結ぶビジネスをして兵士7000人を雇っているのは、そのためだ。月1回の割合でビジネス出張をしている。ビジネスでは、こういう肩書を持っている(と、筆者に渡した名刺にはスウェーデン企業の名前が書いてあった)。
クランは政治家にならなくてもいい。社会的に力を持ち、人々に安らぎを与える存在であるべきだ。無政府状態にあればなおさら、自分は力を発揮する責務がある。
日本で中古車を仕入れてソマリアで売りたい。

 米国がソマリアの軍閥に要請したのは何か。それを実現するために、米国は何を提供したのか。米国と協力関係にあったのならエチオピアとも友好関係にあるはずだが、「エチオピアを追い出した」と言うとは、彼と米国、エチオピアの関係は何だろうか。…想像できることは、ブッシュ政権は何かのためにソマリアの軍閥を利用した、ということだ。

 ブッシュ政権と軍閥の間での金銭授受、米中央情報局(CIA)と軍閥の密約、軍閥が当てにできずエチオピアに派兵を依頼したCIA、そして軍閥もエチオピアも両方突き放したオバマ新政権…。そんな関係が頭に浮かんだ。これらをすべてB氏に問い正すには、3時間は要するだろう。

 残念なことに、飛行機の時間が迫ってきた。名残り惜しく「行かねばならない」と言うと、B氏はある電話番号を筆者に渡した。「明日ならここにいる。電話してくれ。すべて話す」。それは、ジブチ国内の地上電話の番号だった。

 最後にB氏は言った。「スズカ、モガディシュへ来い。俺の家に泊まるといい。空港に着いてから帰りの飛行機に乗るまで、俺が全部面倒を見る。ヘリコプターで迎えに行くよ」と。

 見上げるような大男のB氏と筆者とが握手して手を振る様を、ロビーで歓談する多くのドイツ兵が興味深げに見上げているのが、彼らの視線から分かった。

「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

お客様が低価格に慣れてきている。

片岡 優 ジェットスター・ジャパン社長