「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

あの2人の孫がリーダーに? 恥ずべき日本の「血統主義」

霞が関には“古参のゴミ掃除”を狙う一派も

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2009年5月18日(月)

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 5月16日午後、民主党議員は鳩山由紀夫氏を党首に選んだ。これで自民党と民主党の党首それぞれが、60年前に日本の戦後政治を牽引した吉田茂、鳩山一郎の孫ということになった。“名門”が“一般人”を退け、政党の顔になるとは、パキスタンやインドネシア、インドの政治を思い出させる。

まともすぎた岡田氏、名門の香りがする鳩山氏

 メディアの下馬評では、鳩山氏が優勢だった。日経ビジネスオンラインの読者アンケートでは、岡田克也氏を推す声が大きかったようだが…(参考記事はこちら)。岡田氏は、知性的な人に人気があったのかもしれない。

 地方議員や若手・中堅議員は岡田氏を推薦しているとの報道もあったが、現実には厳しいと筆者は思っていた。なぜなら、小沢一郎前代表の辞任から選挙実施まで中4日という短期間では、政策論争などできようもなく、岡田氏の特長を出す余地はなかったからだ。他方、鳩山氏には名門出身という強みがあった。結果的に“一般人”の岡田氏が、“名門貴族”の鳩山氏に及ばなかった。

 岡田氏は不遇である。2005年8月、いわゆる郵政選挙においてマニフェスト「日本刷新8つの約束」をまじめに出したにもかかわらず、大敗。悪いことに、このマニフェストはその後自民党に真似されてしまった。その時のマニフェストを以下、簡単に書いてみよう。

(1)ムダづかい一掃!サラリーマン狙いうち増税なし
 衆議院定数80の削減、議員年金廃止、国家公務員人件費の2割削減等、3年間で10兆円のムダづかいを一掃します。

(2)安心・安全で格差のない社会・身近な幸せの実現
 社会保険庁を廃止し、年金を一元化します。

(3)コンクリートからヒト、ヒト、ヒトへ
 公立学校改革に着手し、月額1万6000円の「子ども手当」を支給します。

(4)分権革命〜地域のことは地域で〜
 地域の工夫を引き出すため、ヒモつき補助金18兆円を、地方の財源に切り換えます。

(5)世界とともに生きる「開かれた国益」の実現
 12月までにイラクから自衛隊を撤退させ、日本にふさわしい復興支援に取り組みます。

(6)「みどり」と「食」と「農業」の育成
 10年後の自給率50%実現のため、「直接支払制度1兆円」をスタートします。

(7)公正・透明な市場経済へ
 官製談合を根絶し、道路公団廃止と高速道路無料化を実現します。

(8)本物の郵政改革〜官から民へ
 郵貯・簡保を徹底的に縮小し、「官から民」へ資金を流します。郵便局の全国一律サービスは維持します。

 (1)以外のマニフェストはその後の自民党が何らかの形で着手し、(3)(4)は昨年秋からの経済危機が起きてからは中止になっている。政策は時勢のニーズにもよるもので、政党が変わったから理念も着眼点も大幅に変わるとか、党首交代で重点に変化が起きるというものではない。そういう中で、岡田氏は自民党にも取り入れやすいまともな政策を発表したのである。

 生み出すものがまともであると、“その人となり”に衆目は集まりにくい。大衆性から離れてしまう。さめた言い方であるが、“人となり”で勝負することになってしまうと、名門の香りがし、メディアで他党所属の弟と座談したりしてしまう(月刊「文藝春秋」5月特別号)鳩山には、それなりの特色があるように思えてしまう。

 岡田氏が自身の長所と短所を「頑固、終始一貫」と述べていたのは、まさにその通り。不遇の才知である。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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