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メジャーリーガーが語る。射殺事件は差別を「変える」か

オークランド、格子の街角【後編】

  • 林 壮一

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[1/3ページ]

2009年5月21日(木)

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(前編「無抵抗の黒人青年を、警官は地下鉄ホームで射殺した」から読む)

 1999年2月5日、ニューヨーク州ブロンクス。午前0時40分頃のことだ。西アフリカのギニアから移住したアマドゥー・ディアロという名の黒人青年が、レイプ犯を追っていた4人の白人警官に職務質問された。ディアロは自宅へ戻るところで、アパートの前に立っていただけであった。

「こいつは、ガンを持っている!」

 そう叫んだ警官の一人が、突然ディアロに向けて発砲。他の警官たちも次々にディアロ目がけて銃を乱射する。合計41発が放たれ、そのうちの19発が命中した。無論、ディアロは絶命する。即死だった。

無罪になった4人の警官

 アマドゥー・ディアロは、オスカー・グラントと同じ22歳であった。

 実際のところ、ディアロは銃など所持していなかった。彼のポケットに入っていたのはアパートの鍵と財布のみである。ろくに調べもせずに若者の命を奪った4人の警官は、11日後に逮捕され〈第2級殺人〉として提訴される。

 1年後の2001年2月1日、12人の陪審員によって、この4人の白人警官に無罪が言い渡された。陪審員は7名の白人男性と1人の白人女性、そして4名の黒人女性で構成されていた。

 判決は勿論のこと、4人が一人に対して41発も銃を連射したことから、人種差別がもたらした事件として大きな論争が沸き起こる。「ニューヨーク・タイムズ」紙と「CBSニュース」が行った世論調査では、50パーセントのニューヨーク市民が同判決を受け入れられないと答えた。正当を唱えたのは30パーセント、結論を出せないと応じた者が20パーセントのデータを数えている。

 また、裁判が行われた場所がディアロの住んでいたブロンクスから、同じ州のアルバニーに移されたことも不可解だった。アルバニーは住民の86パーセントが白人で、黒人は9パーセントしかいない土地だ。そうした場所の住民が、マイノリティーに如何なる視線を送るかは想像し易い。

TIMEの表紙になったディアロ

 ディアロの死から5年弱が過ぎた2004年初頭、ニューヨーク市は遺族に300万ドルの謝罪金を支払うことを通達する。ディアロの遺族は了承したが、遺族に付く弁護士が「少な過ぎる」と900万ドルを要求した。

「ディアロは本当に気の毒だ。でも、多くのブラックは、そんな扱いしか受けないのさ。黒い肌の宿命かもしれないな」

 この連載の第6回7回(「元世界3階級王者アイラン・バークレー、貧しさの中からの言葉」前後編)に登場したアイラン・バークレーは事件後、ブロンクスに住んでいた“隣人”についてそう語ると、深い溜息をついた。

「身の危険を感じた」

 というのが、ディアロに発砲した警官たちの主張である。今年の元旦にオスカー・グラントを射殺した警官も、今後、法廷で同じような言葉を口にするのだろうか。また陪審員たちは、どのようなメンバーが選ばれるのだろうか? グラントの命を奪った27歳の白人警官の行為は、常識ある人間の感受性によって裁かれるのだろうか。

 確証などないが、私にはアマドゥー・ディアロ裁判のような結果が出るような気がしてならない。

黒人メジャーリーガーに聞いてみる

 オークランドを訪ねた2日目、私は久しぶりにアスレティックスのゲームを観戦した。メジャーリーガーにオスカー・グラント殺害事件を尋ねてみようと考えたのである。

画像のクリックで拡大表示

 私がMLB(米大リーグ機構)を取材していた2001年から2005年までのアスレティックスは、アメリカンリーグ西部地区の強豪と呼べたが、今シーズンは最下位に甘んじている。同チームはカネをかけない球団経営が売りだが、それだけに名のある選手はロートルばかりで、柱としてチームを牽引するリーダーが見られない。

 4年ぶりに選手控え室に入った私は、ある事に気付かされる。アスレティックスには、アメリカ国籍の黒人選手があまりいないのだ。かつての盗塁王で、1979年から2003年まで、太く、長く活躍したリッキー・ヘンダーソンがアスレティックスの顔だった時期もあるが、思い起こせばヘンダーソンの他に、黒人の主力選手はほとんど存していない。

 そんななかで、背番号11を付けたラジェル・デイビスという黒人選手が目に留まった。メジャーリーガーとなって3季目の28歳である。

コメント3件コメント/レビュー

オークランドの近くに住んでいます。この街の一部の地域の治安は本当に悪く、昨年の年間殺人件数は100人以上です。そして、今年、つい2ヶ月程前、四人の警察官が、一人の仮釈放中の人に射殺されています。これはもちろん異常事態ですが、この土地で警察官として働いている方々が、相当なプレッシャーの下にあるということは想像できるでしょう。それがオスカー・グラント氏を死なせた警察官の行為を正当化することはありませんし、彼の行動、精神状態に関しては多くが明らかにされなければなりません。しかしながら、「差別」という言葉が時として人々に思考停止をもたらしてしまい、安易な悪者探しのターゲットになりがちであることにも注意する必要があると思います。(2009/05/21)

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オークランドの近くに住んでいます。この街の一部の地域の治安は本当に悪く、昨年の年間殺人件数は100人以上です。そして、今年、つい2ヶ月程前、四人の警察官が、一人の仮釈放中の人に射殺されています。これはもちろん異常事態ですが、この土地で警察官として働いている方々が、相当なプレッシャーの下にあるということは想像できるでしょう。それがオスカー・グラント氏を死なせた警察官の行為を正当化することはありませんし、彼の行動、精神状態に関しては多くが明らかにされなければなりません。しかしながら、「差別」という言葉が時として人々に思考停止をもたらしてしまい、安易な悪者探しのターゲットになりがちであることにも注意する必要があると思います。(2009/05/21)

野球選手が一裁判の話にしっかりと受け答えが出来るという点に、人種差別などの社会問題をどんな人でも感じていると言うことなのでしょうね。一方日本では元野球選手が自分のバカさを売りにテレビ出演しています。こういう部分も今回戦後最悪のマイナス成長を記録した日本と金融不安の発信源でも立ち直ろうとしているアメリカの底力の違いがあるのではないでしょうか。(2009/05/21)

毎回楽しみに読んでいます。 インタビュー相手の写真が正面で撮られているので、どう言った表情でインタビューを受けていたのかが良くわかります。 その地の写真が多数有るのも良いですね。 他であるリポートの類より多めに挿入されている様に感じております。視覚情報は多くの事を語ってくれますので、これからも色々な町の表情を見せて下さい。 アメリカの警察官の正義感、使命感、職業意識について、昔から興味が有りました。 どんな立場、処遇、意識でその職に有るのか。 勘繰って言えば誰の為に組織されているのか。 地方によって様々だと思います。 アメリカという国家は、特定の人種の為に有るのか。 興味は尽きません。(2009/05/21)

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