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あまりにも不条理な「身分成り済まし事件」

大学4年間がムダになった瞬間

2009年5月22日(金)

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 天津師範大学の“歴史文化学院旅游管理専業(歴史文化学部観光管理学科)”4年に在籍する女子学生の羅彩霞は、驚愕の事実を前にして呆然となった。何が起こったのか事態がのみ込めず、頭の中が真っ白くなったのだ。

ネットバンキングの手続きをしてみたら

 その日は2009年3月1日、大学卒業を6月に控えた羅彩霞は数名の同級生と一緒に就職説明会に参加したが、空き時間を利用して建設銀行の支店に出向いてネットバンキングの手続きをしようとしたのだった。

 手続きには“居民身分証(身分証明書、以下「身分証」)”が必要なので、身分証を取り出して銀行のコンピューターに身分証番号を打ち込んだ。すると、対応した銀行窓口の係員がぶっきらぼうに、「あんたのデータはおかしいから手続きできないよ」と驚くべき言葉を発したのだ。

私が私じゃない?

 言葉の意味が分からず、「何を言ってるのよ、バカなこと言わないで」と応じた羅彩霞は何度も身分証番号を打ち込んだが結果は同じで、係員は手続き不能を繰り返すばかり。

 そこで、係員にモニターを見せてもらうと、そこには次のような羅彩霞の身分証データが映し出されていた。

 氏名:羅彩霞
 身分証番号:4305211986267546
 発行機関:貴州省貴陽市公安局白雲分局

 そして大きく映し出されたカラーの顔写真には彼女と似ても似つかない他人が写っていた。

 「私は今までにネットバンキングの手続きをした覚えはないのに、どうして私の名前と身分証番号が登録されているの。しかも写真は赤の他人。こんなバカなことがあるはずない」と焦燥に駆られながら写真に目を凝らすと、なんとそこに写っていた人物は故郷湖南省の出身高校“邵東県第一中学(邵東一中)”の同級生の誰かに面影が似ているのだった。

嫌な予感が現実に

 大学の寄宿舎に戻って冷静になった羅彩霞はふとあることに思い至った。それは昨年の7月に彼女が高校教員資格を申請した時のことだったが、資格試験の担当教官の1人が彼女に「既に貴州省で教員資格を申請したことがあるのでは」と質問し、彼女が「ありません」と答えたことだった。

 もしかして、銀行のデータにあった身分証の発行機関が貴州省だったことと何か関係あるのではないのか。彼女は何かが起こりそうな嫌な予感がしてならなかった。

コメント6件コメント/レビュー

これから間もなく中国の上海で働くことになりますが、こんなことは中国では日常茶飯事だと向こうにいる友人に言われてます。外国人である身分を持っている私はこんな目に遭わないように何とかがんばって行きたいと思っています。(2009/06/02)

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「あまりにも不条理な「身分成り済まし事件」」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

これから間もなく中国の上海で働くことになりますが、こんなことは中国では日常茶飯事だと向こうにいる友人に言われてます。外国人である身分を持っている私はこんな目に遭わないように何とかがんばって行きたいと思っています。(2009/06/02)

実は私も以前日本で同じ様な事例に遭遇した事があります。5年ほど前、東北部某県のエンジニアを日本に招聘しようとしたところ、一人の女性が入国及びオーバーステイによる送還記録があり日本への技術VISAが下りなかったのです。しかし彼女は新卒の大学院生で、海外への渡航は勿論遠距離の旅行の経験も無かったのです。4年の大学での専門教育と1年の研修を無駄にしない為、本人が現地で八方手を尽くしたのですが、結局彼女は日本に来る事は叶いませんでした。何者かが彼女の身分を偽って、先に日本に入国し、恐らく荒稼ぎをした上で故郷に送還された事は想像に難しくありませんでした。(2009/05/25)

おそるべし。こういう問題は、人口が多すぎて管理し切れていないのか、それとも役所が不正に慣れきっているからおきるのか。日本の年金と同じようですね。(2009/05/23)

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三品 和広 神戸大学教授