「水汚染危局」
財経記者 トウ海

三峡ダム*の完成によりできたダム湖の周辺では、長江本流と支流の水質汚染が急速に悪化し、大きな試練に直面している。
*長江中流に建設された世界最大級のダム。環境への大規模な影響が計画段階から指摘されていた。
3月下旬、本誌(財経)記者は湖北省宜昌市から船で長江をさかのぼった。長江と主な支流の合流点では、気温の上昇とともに「水華」と呼ばれるアオコの異常発生のリスクが高まり、ダム湖沿岸の都市は対策に追われていた。
ダムの完成で長江本流の水位が上昇したため、ダム湖に流れ込む支流の一部区間によどみが生じ、水の流速が毎秒1センチメートル以下になっている。
昔から「流水は腐らず」というが、その効果がなくなってしまい、支流のよどみに大量の窒素やリンがたまった。富栄養化した水に日光や気温の一定の条件がそろうと、生態バランスが崩れて藻類などが異常繁殖を起こす。これが「水華」である。
住民の健康に重大な脅威
三峡ダムが2003年に蓄水を開始して以来、「水華」は絶え間なく発生し続けている。重慶市副市長の譚栖偉によれば、同市の管轄区内にある23の支流のうち半数以上で、毎年5月から10月にかけて「水華」が観測されているという。
「水華」を発生させる藻類の中には、毒素を分泌するものもある。中でもミクロシスチンという毒素には肝臓がんを誘発する発がん性があり、飲料水用の通常の浄化処理では毒性が消えない。「水華」の多発は、住民の健康に対する重大な脅威となっている。
「重慶の都市部には長江と嘉陵江に28カ所の取水口があり、その水質は全体としては基準を満たしている。しかし水質の悪化は憂うべき状況だ」。そう譚栖偉は打ち明ける。
先進国のほとんどは、飲料水の水源に富栄養化した水を使うことを禁じている。ダム湖の沿岸にある宜昌市興山県などでは、長江や長江支流からは飲料水を取り込んでいない。しかし三峡ダムはもともと、中国の水資源の戦略的備蓄庫として建設された。ダム湖が全面的に富栄養化すれば、その影響は甚大なものになるだろう。
長江水利委員会*の調査によれば、ダム湖の汚染源は沿岸や上流から流出した土砂に含まれる汚染物質のほか、農村の生活排水や、農業や養殖による汚染などがある。さらに現実の問題として、企業の違法な汚水排出による汚染も後を絶たない。
*長江流域の水利行政を担当する国家機関。中国水利省の傘下に置かれ、三峡ダムプロジェクトの事業推進を担う。
実際、三峡ダムの蓄水開始で工場の移転を迫られた少なからぬ数の化学工場が、ダム湖周辺への移転を進めている。一部の地方政府は、企業を地元につなぎ止めるために国の基準を無視し、甚だしい場合には虚偽の報告さえしているのが実態だ。
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