「中国発 財経」

ネットの激流に飲まれた官製“検閲ソフト”(前編)

「グリーンダム」の搭載強制に批判噴出、セキュリティの欠陥も露呈

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2009年7月15日(水)

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“緑バ”遭遇激流

財経記者 明叔亮

「グリーンダム」――。中国のインターネット史上、世界中からこれほど注目を浴びたソフトウエアは他にないだろう。

 6月9日、中国工業情報化省は、ネット上の有害情報から青少年を保護するため、7月1日以降に出荷される全てのパーソナル・コンピューターにフィルタリングソフトウエア「グリーンダム−ユースエスコート」の搭載を義務づけるという通達を発表した。プログラムのサイズが10メガバイトほどのグリーンダムは、その直後からネットユーザーの注目の的になった。

*記事原文が「財経」に掲載された後の6月30日、中国工業情報化省は「準備が整っていない」ことを理由に、グリーンダムの強制搭載を事実上延期することを明らかにした。

 政府の公式説明によれば、グリーンダムには有害なインターネット情報を遮断したり、ネットへの接続時間を制限したり、オンラインゲームへの参加を管理したりする機能がある。ウェブサイトの閲覧記録をチェックできるので、子供たちのネットの利用状況を保護者が把握し、有害情報に触れるのを防ぐのに有効だという。

機能を無効化するソフトがたちまち出現

 政府が未成年者の健全な育成のために努力すること自体は、多くの人々が賛同するだろう。だが、政府によるグリーンダムの搭載強制は、ネットユーザーの強い不信感を招いた。背景に、ネット上の情報を統制しようとする政府の思惑が見え隠れするからだ。

 ネットユーザーから沸き上がった批判に、工業情報化省はあわてて次のように釈明を迫られる事態になった。「グリーンダムをインストールするかどうかはユーザー自身が選択できる。また、ユーザーのネット利用を監視したり、個人情報を収集したりすることは一切ない」

 しかし、この説明はネットユーザーの不信を払拭できなかった。それだけではない。工業情報化省の通達が発表されるやいなや、世界中の情報セキュリティの専門家やハッカーたちが、グリーンダムに脆弱性が存在しないか調べ始めた。その結果、グリーンダムの機能を無効にするソフトウエアがたちまち出現したほか、一部の専門家から「グリーンダムは第三者の知的財産権を侵害している恐れがある」と指摘されるに至ったのである。

 グリーンダムは、政府がネット上に「緑色ダム」を築こうとする試みだった。ところが、このダムは自らの欠陥が原因で、完成する前にネットの“激流”に飲み込まれてしまった。

*中国語の「緑色」は、環境にやさしいという意味のほか、安全や健全という意味でも使われる。

 「欠陥のあるソフトウエアを強制搭載させるのは問題だが、グリーンダムの導入をやめれば数千万元の開発費が無駄になる。もはや引っ込みがつかない事態になっている」。あるセキュリティソフトウエアの専門家はそう話す。

 グリーンダムにはもともと不可解な点が少なくない。例えば6月8日、工業情報化省の通達の情報を最初に報じたのは、同省の公式ウェブサイトではなく「緑航網」という無名のウェブサイトだった。

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「財経」は1998年創刊の経済雑誌。隔週刊で、発行部数は約10万部。創刊直後から上場企業の粉飾決算や株価操作などの独自スクープを連発、当局による検閲や報道規制が残る中国で、権威になびかない“硬派”の経済情報誌としての評価を確立した。経済政策や金融分野に強く、中国のエリート官僚や企業経営者の必読誌となっている。

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