「中国発 財経」

ネットの激流に飲まれた官製“検閲ソフト”(後編)

「グリーンダム」の脆弱性は深刻、ハッカーの攻撃の標的に

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2009年7月16日(木)

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“緑バ”遭遇激流

財経記者 明叔亮

前編から読む)

「膨大なウェブサイトの情報を、グリーンダムが完璧にフィルタリングするのは技術的に困難だ」。中国のあるセキュリティソフトウエア開発会社の幹部はそう断言する。さらに、彼はこう続けた。

 「いわゆるフィルタリングソフトウエアは、もともと“迷惑ソフト”になり得る性質を持っている」

 別のウイルス対策ソフトメーカーの幹部は、「有害情報を遮断するために現時点で最も有効な方法は、有害サイトの情報をデータベースに蓄積し、それに基づいてサイトが有害かどうかを識別することだ」と指摘する。これに対し、グリーンダムは“技術的手段”によってわいせつ画像などを自動的に識別し、アクセスを遮断するとしている。だが、そのような技術はまだ確立していない。

 例えば、肌の一部が露出した画像は健全なウェブサイトにも使われており、それをもって有害サイトと判定するのは行き過ぎだ。キーワードを基に有害情報を遮断する技術にも限界がある。「キーワードが少なすぎれば有害情報の一部が漏れてしまう。逆にキーワードが多すぎれば、健全なサイトまで有害と判定されかねない」と、先の幹部は解説する。

人気ソフトとの組み合わせでシステムが不安定に

 それだけではない。複数の情報セキュリティの専門家によれば、グリーンダムの機能が有効かどうかは、実は二の次の問題だという。真に重要なのは、グリーンダムが潜在的な脆弱性をどれだけ抱えているかだ。

 「市場で検証されながら、搭載量が徐々に増えていくなら、脆弱性をそのつど発見して修正できる。しかし政府の命令で一気に大量搭載されてしまったら、問題が爆発的に広がるリスクがある」

 さまざまな懸念が渦巻くなか、本誌(財経)記者はある大手ソフトウエアメーカーの技術者から1冊の評価報告書を入手した。

 それによれば、グリーンダムは容易にインストールでき、使い勝手も良好で、パソコンに詳しくない保護者でもウェブサイトの閲覧記録を簡単にチェックできる。だが、フィルタリング機能と技術上の脆弱性に関しては明らかに問題があるとしている。一例を挙げると、チャット用ソフトウエアの使用制限について、グリーンダムは「QQ」にしか対応していない。他のチャットソフトを併用すると、容易にログインできてしまうというのだ。

*中国の騰訊(テンセント)が開発したインスタントメッセージング(IM)ソフトウエア。2008年末時点のユーザー数は3億7000万人を超える。

 さらに、グリーンダムの技術水準は未熟で、自己防御機能が低く、市販のセキュリティソフトウエアを使って簡単に機能を停止できるという。また、グリーンダムが大量に搭載されると、既存のウイルス対策ソフトとコンフリクトを起こすのは必至であると、評価報告書は警告している。

 別の技術アナリストは、グリーンダムで「QQ」「MSNメッセンジャー」「迅雷」などの人気ソフトを遮断しようとすると、システムの不安定化を招くと指摘する。これらのソフトには強力な自己修復機能があるためだ。

*「MSNメッセンジャー」は米マイクロソフト製のIMソフト。中国ではQQとともに広く普及している。「迅雷」は中国の迅雷網路技術が開発したダウンロード支援ソフト。P2P(ピアツーピア)技術を応用し、動画などを高速にダウンロードできる。

 「グリーンダムは有害コンテンツではなく特定のソフトウエアの動作を遮断しようとする。これは市場のルールに完全に背くものだ」と、このアナリストは話す。

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「財経」は1998年創刊の経済雑誌。隔週刊で、発行部数は約10万部。創刊直後から上場企業の粉飾決算や株価操作などの独自スクープを連発、当局による検閲や報道規制が残る中国で、権威になびかない“硬派”の経済情報誌としての評価を確立した。経済政策や金融分野に強く、中国のエリート官僚や企業経営者の必読誌となっている。

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