「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

うそと、はぐらかしばかりの「政権公約」

シリーズ「政界ガラガラポン」(5)

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2009年8月5日(水)

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 政治の大改革を期して始めたこのシリーズは、政界大再編の時機を迎えて問題の背景と論点を整理することで、有権者の声が最大限に反映できる環境を作るのが狙いだ。

 前回の記事には大変多くの反響を頂き、多様なご意見を頂戴した。改めて、筆者がリストアップしたテーマは議論されるべき論点であると、感じた。

 しかし、先週末に揃った民主党と自民党のマニフェストには、筆者が挙げた論点は含まれていなかった。

 これほどに重要な、かつ、過去にも争点となったテーマを政治家は無視しようとするのか。メディアもまた取り上げることがないとは、おそらく、争点化したくない意図があるのではないか。

 けだし、機微に触れるテーマであり、百人百色に別れてしまうだけに有権者の気持ちを集約しにくいと判断した誰かが、マニフェストに盛り込ませなかった。これも官邸の意向なのだろうか。

 今回は、いただいたコメントを参考に、論点を整理したい。

「核を持ち込まない」をどうするのか、方針の一貫性を

■非核三原則

 自民党がこれまで政府の方針として挙げてきた「非核三原則」は、実は有名無実化していることを、前回指摘した。

 非核三原則とは、核兵器を製造せず、持たず、持ち込みを許さないとする日本政府の方針のことである。このうち「核の持ち込みを許さない」が事実上、ほごにされてきたのである。これまで、何度も国会で野党の追及を受けながら、「持ち込みはない」とうそを繰り返してきた。

 他方、「当時の日本には、ソ連に核の傘があることをちらちら見せつつも、口では非核三原則をそらんじる、ある種の“教養”があった」とは、防衛省OBの弁だ。冷戦時代、核の持ち込みがあると明言することは、ソ連を刺激し、核の拡散を招くことが必至であった。

 なるほど、軍事力とはバランス。拮抗する状態にしておくことが冷戦時代においては重要であったから、「核が必要」と認識していた外交官、防衛関係者は多かっただろう。他方、それを公言すると地域全体が不安定化する。被爆者の気持ちも逆なでする。それが故の、二枚舌だったと筆者は理解した。

うそをつく必要はもうない

 しかし、冷戦が終わり、機軸国同士の対立から2国間で紛争が発生しやすくなり、核だけではなく経済力やソフトパワーによって国力が測られる時代になった。冷戦時代のようなうそをつく必要は、もうないのではないか。

 正式に持ち込みがあったことを認めるなり、あるいは今後も持ち込みOKにするなり、一貫した方針を採るべきではないか、というのが筆者の主張である。これを選挙の争点として、有権者に問うて欲しい。

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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