「だから中国人はダメなんだ!」
会議室に突然、響き渡った怒鳴り声。出席していた営業マン達の顔がにわかにこわばった。
ある日系メーカーの北京営業部での会議のことである。実は、声の主は“中国人”の部長だった。
反感持たれる本社採用の中国人幹部
以前の営業部長は日本人だったが、本社の指示による「駐在員減らし」の対象となり、今年4月に帰国した。その後任として送り込まれたのが、日本の本社で採用され、直近まで比較的人材の層が厚い上海の営業本部で働いていたエリート社員だった。
彼は上海出身で、日本に留学した経験がある。卒業後、日本に滞在したままこのメーカーに就職し、ついには日本に帰化した。だから、本社のこともよく知っているし、無論、日本語もペラペラだ。後任としては、まさに適任と思われていた。
しかし、営業マンたちの怒りは沸騰した。「同じ中国人にあんなことは言われたくない」「中国人のくせに、日本人のマネをして」――。
「それに、なんだ、あの上海弁は」「北京営業部の責任者に上海人を送ってくるなんて、本社は北京のことを何にも分かっちゃいない」――。怒りは、本社の人事政策にまで及んだ。
彼の一言をきっかけに、営業マンだけではなく、そのほかの現地従業員の気持ちは完全に彼から離れてしまった。現地採用の管理職の中には、新たな職探しを始めるものも出てきた。
日本人なら多少出来が悪くても仕方ないが
「これでは営業成績にも影響が出かねない」と考えた中国人の営業部長は、権力による人事の掌握を図った。自分に従うものは優遇し、そうでないものは徹底的に干す。指示命令は一方通行だ。
しかし、しょせんは面従腹背である。モラルを急激に低下した。中国政府が景気対策としてテコ入れしている公共投資のお陰で、営業成績は上向きつつあるが、社内の雰囲気は最悪だ。
以前は、きちんと整頓されていた喫煙室も、床がたばこの吸い殻や灰で汚れ、ゴミの分別もいい加減になった。
3か月ぶりに所用があって日本から北京に出張してきた前任の営業部長は、雰囲気のあまりの変わりように絶句したという。
そして、こう解説してくれた。
個別企業の問題を普遍化しているものとして取られているので、論理的に未熟さが露呈している。そもそも日経ビジネスにこんなレベルの文書を載せるのはショックだった。(2009/08/25)