米国の新聞社がネット上での課金を開始しようと知恵を絞っている。
金融危機までの米国の新聞社のデジタル戦略は、「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)など一部の例外を除いて、オンライン上ですべてのコンテンツを無料で公開してトラフィックを増やし、それによって広告収入を増やそうというのが基本的な戦略だった。
しかし、昨年秋の金融危機で広告市場はペーパー版・オンライン版ともに激しく落ち込んだ。このため、今年に入ってから、米国の新聞社は戦略を転換し、ネット上でコンテンツに課金しなければ生き残れないという考え方が支持を集めてきている。
この事情については本コラムで半年前に掲載した「新聞を救う究極のアイデア?」で扱った。「日本経済新聞」(2009年8月29日付朝刊)も最新の有料化の動向を報じている。

今回は、新聞のみならず、ジャーナリズムのネット上の課金サービスを代行しようとしてこの4月に発足したベンチャー企業「ジャーナリズム・オンライン」(JO)を取り上げる。創設者の一人であるゴードン・クロビッツにインタビューし、その狙いを聞いた。
新聞・雑誌がコンテンツを無料公開したのは“集団自殺”
JOの発端は2年前にさかのぼる。
スティーブン・ブリル夫妻は、8年前に母校のイェール大学に「イェール・ジャーナリズム・イニシアティブ」と題する寄付講座を設け、1年に数十人の学生を訓練して優秀なジャーナリストを育てようと努力してきた。ブリルは、雑誌「アメリカン・ロイヤー」、コートTVの創設者として知られ、1990年代後半には「ブリルズ・コンテント」という生きのいいメディア分析誌を発行していたこともある。
ところが2年前、この講座の受講生の母親からブリルに電話がかかってきた。その母親は、自分の娘は昨年、巨大なコンサルティング会社でインターンをしていたのに、ブリルは娘を将来の希望を持てない職業に誘い込んでいると不満をぶつけたという。一体、ジャーナリズムの道に進んで学生ローンを返せるのか、と。
近年、米国の新聞社の人員削減や破産はあまりに激しく、ブリルに不満をぶつけるのは親としてもっともである。
この母親の不安に対するブリルの答えが、JOである。ブリルは、多くの新聞・雑誌がネット上でコンテンツを無料で公開したのは“集団自殺”だと考え、ネット上での課金を定着させる必要があると考えた。
JOはウェブ上や電子リーダーなどでの課金サービスを代行することを目的としている。読者はJOの口座を開設すると、JOの加盟社への支払いを1つの口座で済ませることができるようになる。
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