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少年は叫んだ「僕は、高く飛びます!」

Opportunity Schoolで教えてみる【その3】

  • 林 壮一

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2009年10月15日(木)

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「先生、おはよう」

 新たなボランティアの日、教室に入ると少年は言った。

「おはよう。『先生』って教えたっけな?」
「習ったよ」

 少年は応じたが、私は教えた内容をメモしているので、彼が独自で学習したことは明らかだった。

 この日も、最初に五十音の復習から始めた。私が平仮名を書き、彼に読ませてみる。大方、頭に入ったようであるが、ほんの数回のレッスンで全てを把握できる筈もない。少年は答えに詰まると、「Sorry」と語った。

「謝らなくたっていいよ。語学なんて、何度も何度も間違えて覚えていくものなんだから」

 こんな小さな事で、詫びを口にしてしまう彼。同級生たちから虐められた折にも、同じ言葉を発していたのだろうか。相変わらず白いポロシャツは汚れたままで、寝癖も直っていない。その様に私の胸は痛んだ。

バルーンレースを見に行った親子

 前回、共通の話題がなかなか見付けられなかった私は、彼に問いかけた。

「バルーンレースは見たかい?」
「うん。とっても良かった。ママが連れて行ってくれた!」

 私の住むリノ市では、毎年世界中から90名弱の愛好家が集い、大空に気球が舞うイベントが催される。これが「リノ・バルーンレース」であり、晩夏の風物詩となっている。2009年は9月10日から12日までの3日に渡って、色とりどりの気球がリノの空に上がった。

 合衆国が深刻な不景気に悩まされているのは事実だが、本年度のバルーンレースは、延べ17万5000人の観客を集めた。この数字は、28年に及ぶリノ・バルーンレースの歴史上、最大である。

「そうか。楽しんだんだね」
「9歳の妹も興奮していたよ」
「ならば、バルーンは●●だった、っていうセンテンスを日本語で作ってみようか?今日は、幾つか形容詞を勉強してみよう」
「はい」
「気球は、どうだった? 自分で見て、何を感じた?」
「大きくて、重くて、綺麗だった」
「じゃあ、それを言ってみよう」

 彼に発音させながら、私はちょっと安心した。テイラー・ハーパーは少年の母親を「クレイジー」と評したが、少年の母親は午前7時前に始まるバルーンレース会場に、2人の子供を連れて行ったのだ。女手一つで子供を養うことは、他人には分からない苦しみがあるに違いない。おそらく彼女は、虐めに遭った息子を見詰めながら、自身も深く傷付いているであろう。そして、日々の暮らしに追われ、子供たちと接する時間が十分に取れないのだろう。そんななかでも、子供たちを喜ばせたい一心で2人の手を引き、バルーンレース会場を訪れたのではなかったか。

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