「吉田鈴香の「世界の中のニッポン」」

ウイグルの母「チベットは先に国際ステージに立った」

世界ウイグル会議議長インタビュー、予想と違ったいくつかの答え

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2009年10月28日(水)

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 今年7月、G20の会合を途中で中止して胡錦濤総書記が本国に帰ったことは、記憶に新しい。会議を放り出しての帰国は、ウイグルでの騒動を鎮圧するためであった。本格武装した軍の投入を求める声が強い中、胡錦濤は、それをしたのでは国際社会からの批判を受けてしまうと判断し、警察の身なりをした軍人の投入でとどめた。その後、ウイグル人、漢人(漢民族)双方に死刑宣告がなされるなど、事後処理は続いている。

 中国政府が弾圧を加え続けているチベットとウイグルの民族。チベット族には、ダライ・ラマ氏が人々の心のよりどころとなり、インドに在住しながら、中国政府に対話を求めている。ウイグル族は、この人、ラビア・カーディル氏が精神的な柱となって率いている。カーディル氏は世界ウイグル会議議長でもある。

 カーディル氏は、2005年に6年間続いた投獄を突如解かれた。今は米国の首都、ワシントンで夫と子供たちと共に暮らしている。

 その彼女が、自伝「ウイグルの母、ラビア・カーディル自伝」の出版を記念して来日した。カーディル氏が中国国内で受けてきた数々の苦痛と弾圧は、彼女の自伝に詳しい。自身の個人的な家族関係がそのまま、中国政府によるウイグルへの継続的な弾圧の証左として記録されている。503ページにわたる分厚い本だが、筆者は読了してカーディル氏を訪ねた。


ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝 中国に一番憎まれている女性』ラビア カーディル、アレクサンドラ カヴェーリウス著、 水谷尚子監修、熊河浩翻訳、ランダムハウス講談社、2400円(税別)

 ―― カーディルさん、今日はお目にかかれて嬉しいです。私はウイグル問題に関心があり、実はアブドゥレヒム・オトキュル氏が書いた『英雄たちの涙―目醒めよ、ウイグル』を読んだりしておりました。そこへ、カーディルさんが来日されるというので、参りました。

 カーディル それはありがとうございます。

 ―― 今は、米国でどのような毎日を過ごしていらっしゃいますか。

 カーディル 1949年に中国に占領されてから60年経ちましたが、毎日大学や、教会、自分のオフィス、議会へ行き、ウイグルで何が起きているかを話しています。

東トルキスタンの人間、1人のウイグル人

 ―― ウイグルでの貿易、投資のビジネスはもう止めたのですか?

 カーディル 1997年、(新彊ウイグル自治区の)イリで大きなデモがあり、それがきっかけで私は逮捕され、ビジネスも停止しました。1997年は私の黄金期で、ビジネスも政治的地位もまた、最高位にありました。ですから、私は政府に対してデモをした人たちに正義をもって対応するよう求めました。

 ―― カーディルさんはご自分の国籍はどこだと思っておられますか。

 カーディル 1948年に生まれてからずっと、逮捕されている間も、そして外国で暮らす今も、私は自分を東トルキスタンの人間、1人のウイグル人だと思っています。ほかの国籍だと思ったことはありません。

 ―― 国際的に認められるということではなく、ご自分の気持ちとして東トルキスタンの人だと思っているのですね。

独立ではなく民族自決、自治権を求めている

 カーディル 私はウイグルに生まれました。私のお金は中国領の新疆ウイグル自治区で生まれましたが、いつも、どこにいようとも、私はウイグル人であると思っています。

 ―― 今カーディルさんが米国でしていらっしゃることはウイグルの実情を世界に訴えることですが、カーディルさんが目指しているのは、東トルキスタンの独立ですか?

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著者プロフィール

吉田 鈴香(よしだ・すずか)
ジャーナリスト

吉田 鈴香1958年生まれ、法政大学大学院修士課程修了。スウェーデン国防軍国際センター民軍協力コース修了。広告代理店、出版社勤務を経てフリージャーナリストとして独立。1989年より国際協力の取材を始め、現在では世界の紛争地に赴くかたわら、発展途上国の開発・援助政策、コミュニケーション戦略を作成する。拓殖大学国際学部非常勤講師も務める。
主な著書に『アマチュアはイラクに入るな』(亜紀書房)、『紛争から平和構築へ』(論創社、共著)など。ウェブサイト「吉田鈴香が見る世界」も公開中。Twitterのアドレスはこちら



■編集部よりお知らせ
本コラムの著者である吉田鈴香さんが参議院選挙に立候補することになりました。 そのため新着記事の更新を停止いたします。[2010年6月14日]

■筆者より
2年弱、読者の皆様の叱咤激励に支えられながら続けてまいりましたことに厚く お礼を申し上げます。ご愛読ありがとうございました。(吉田鈴香)



このコラムについて

吉田鈴香の「世界の中のニッポン」

東ティモールから旧ユーゴスラビア、シエラレオネ、イラクまで、世界の紛争地帯をジャーナリストとして訪ねてきた著者が、国際支援の現状、ODA(政府開発援助)に望むこと、武装解除と平和交渉などを鋭くリポートする。

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