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中国における<花木蘭>(ムーラン)の再映画化に思う

2009年11月6日(金)

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 中国の伝説的故事である「花木蘭」(ホワ・ムーラン)が1998年にアメリカのウォルト・ディズニー・ピクチャーによって“MULAN”というタイトルでアニメ化され、中国では非常な好評を得ていた。中国語の字幕スーパー付き英語版は正規版としても発売され、100元近かったと思うが、私も購入して観た。

 拙著『中国動漫新人類』では、某中国政府高官が憮然たる面持ちで、米国製アニメとなって「逆輸入」されてきた中国の故事に、若者たちが熱狂的にはまっている現実を憂えている姿をご紹介した。若者たちは小さいころから日本製の漫画で「三国志」や「水滸伝」を見慣れてきたこともあって抵抗が少ないようだが、中華民族の文化を振興させようとしている中国政府にとっては看過できない現象だろう。

 その“MULAN”が、今度は中国大陸で実写化され、映画として今年の12月に公開されることになった。タイトルは『花木蘭』(英文名はmulan)。制作は北京星光国際伝媒有限公司、北大(北京大学)星光集団、湖南電広伝媒有限公司、上海電影集団、北京小馬奔騰文化発展有限公司、保利博納電影発行有限公司などの合作だ。木蘭(ムーラン)役は、かつての日本軍の軍旗をデザインした服を体にまとったことで売国奴として、全中国から罵詈雑言を浴びた、あの趙薇(ヴィッキー・チャオ)が演じる(彼女の画像はこちら)。映画のポスターは、こちらからご覧いただける。

 北魏時代に花木蘭という少女がいた。小さいころから父親に訓練を受け、武芸の達人として育った。18歳の時、遊牧民族の侵略を受け、魏の国全土の民に徴兵命令が下る。どの家からも一人兵隊を出さねばならない。木蘭は年老いた父親を今さら出兵させるに忍びず、自ら男装して父の代わりに出兵する・・・というのが、このお話だ。

 いま中国の人々は、中国を発祥地とする文化、あるいは中国古来の故事逸話、あるいは史実が、外国メディアによって映画やアニメとなって逆輸入される現象に対して、非常な不快感と警戒感を示している。

日本よりも「嫌われた」韓国

 たとえば韓国。

 中国新華社発行の「国際先駆導報」は、2007年12月10日に、中国国内における民意調査において、網民(ネット市民)1.2万人を対象として「あなたがあまり好きでない国はどの国ですか?」という質問をしている。それによれば、「韓国」が1位で全体の40.1%を占め、王座を独占(?)してきた日本(30.2%)を引きずり下ろした。

 韓国のドラマである「韓流」は中国を席巻していたし、また韓国のファッションや歌に関しては、日本のよりも人気があったほどなので、この調査結果に驚いたのは中国人自身だった。しかしその後、どうやら原因は「これは中国文化の横取りだ」と中国人が考えていることだと、徐々に明らかになってきた。

 日本でも人気のあったテレビドラマ「チャングム(宮廷女官チャングムの誓い)」は、中国語では「大長今」というタイトルで放映されたが、このドラマの中では「中国が不動の地位を堅持してきたと自負している『中医(中国医学、漢方医学)』を『韓医』と位置付けて、鍼灸まで含めた東洋医学の発祥の地があたかも韓国であるかのごとく扱っている」と、自尊心を傷つけられた中国人の怒りをかき立てた。

 そもそもこれは事実に反するとして、多くの網民(ネット市民)が韓国人の認識を罵倒したが、ネットナショナリズムというのは双方向性のもの。韓国のネットはさらに過激に、孫中山(孫文)や毛沢東までもが、その先祖は韓国から来ているという「学説」やら「考証」やらを書きこんだり、中国医学の名著『本草綱目』も、実は韓国から出発したものだなどという書き込みが現れる。これらの結果、網民の間における「嫌韓」、「反韓」が燃え広がっていったのである。

 さて、ムーラン。

コメント3件コメント/レビュー

中国の故事逸話を万人受けするポップカルチャーとして発信する一方で中国のナショナリズムを写し出す、“ムーラン”を通じた中国分析に興味を持ちました。建国記念日で見られた民族支配を連想させるようなパレードで中央集権を強調する現代中国は、中国文化で精神統一を図ろうといった側面と筆者が指摘するように民族アイデンティティが分離されるという懸念もあることから、今後の中国はどのような変化を見せるのか注視していきたいと思います。(2009/11/11)

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「中国における<花木蘭>(ムーラン)の再映画化に思う」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

中国の故事逸話を万人受けするポップカルチャーとして発信する一方で中国のナショナリズムを写し出す、“ムーラン”を通じた中国分析に興味を持ちました。建国記念日で見られた民族支配を連想させるようなパレードで中央集権を強調する現代中国は、中国文化で精神統一を図ろうといった側面と筆者が指摘するように民族アイデンティティが分離されるという懸念もあることから、今後の中国はどのような変化を見せるのか注視していきたいと思います。(2009/11/11)

中国の自己認識問題こそは、この国の最大の足かせだと思います。ムーランを巡る諸問題にも、それがはっきりと現れていることが示されたと思います。中国のような大国が、いつまでも劣等意識とその裏返しの尊大さにとりつかれていると、人類に取って多大な損害が及びます。ここについて筋の通った見方を中国が回復するように働きかけるのが、日本の役割かと思いました。(2009/11/11)

ボーダレスなポップカルチャーとナショナリズムのせめぎあい。「偽者」や「盗作」を非難され続ける中国が、実は、かつては「中華文明」として発信したものを、多くの文化や国々が「学び」「取り入れ」てきた歴史があるのに、「現代」において、中国がそれをとりいれようとするにあたってのみ「非難」さらあげつらわれるのはおかしい、という反撃。しかし、マイケル・ジャクソンのように黒人や白人の境界を越え、真に世界にくまなく届けることを目標とするポップカルチャーの使命は、やはりこうした「境界なき場」をつくることなのだと思います。それは、「強制する力」によってではなく「ひきつける力」によって。かつて中華文明が帯びていた寛容さと威光こそが、求められているのでしょう。(2009/11/10)

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