「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

2009年11月6日(金)

“蟻族”急増中、大学は出たけれど…

“農民”“農民工”“下崗職工”に続く第4の弱者集団とは何か

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『蟻族:大学卒業生が集まり住む村の実録』

 中国で“蟻族”という新語が生まれた。

 この新語の起源は『蟻族:大学卒業生が集まり住む村の実録』(陝西師範大学出版社刊)という本の題名にある。

 北京大学“中国与世界研究中心(中国と世界研究センター)”の博士研究員である“廉思”が調査チームを組織し、北京で実施した1年半に及ぶ実態調査の結果をまとめて2009年9月に出版したものだ。

 “蟻族”とはいったい何を指す言葉なのか。

“80后”の大卒生だが、収入が極めて少ない

 “蟻族”は「集まって暮らす大学卒業生集団」を意味し、高学歴、弱小、群居(群れを作って住むこと)を特徴とする。

 彼らは大学教育を受けたが、臨時的な仕事にしか就いていないか、失業あるいは半失業の状態にある。平均月収は2000元(約2万6000円)未満で、大中都市の都市部と農村部の結合部分にある“城中村(都市化に立ち遅れて生活水準が低い「都市の中の村」)”に集まって暮らしている。

 年齢はほぼ22〜29歳、大部分が大学を卒業して3年。彼らは家賃が安く、居住面積が狭く、衛生条件が悪い賃貸住宅に居住している。

 彼らの多くは、“80后(1980年代生まれの世代)”の大学卒業生であり、高等教育を受けたにもかかわらず、収入が極めて少ない。

 中国で“独生子女(一人っ子)”政策が始まった1980年代に生まれ、家庭では“小皇帝(小さな皇帝)”として君臨し、望んで叶わぬことがないくらいに甘やかされて育った。しかし、今や哀れな境遇に陥り、思い通りにならぬ世間にいら立ちを覚えているのが実情である。

北京だけでも10万人以上

 中国は1999年に大学の募集人数を前年に比べて45万人も増大させたが、これを契機として大学の募集枠は年々拡大して今に至っている。大学の入学者数が増えれば、当然ながら卒業生も増える。

 ところが、大学卒業生が増えた分だけ就職口が増えるのであれば何も問題はないのだが、そうは問屋が卸さない。この結果生み出されたのが、“大学畢業即失業人員(大学卒業してすぐに失業者となった人)”を含む“大学畢業生低収入群体(大学卒業生の低所得者集団)”である。

 こうした集団は北京のみならず、上海、広州、武漢などの大中都市にも分布し、北京だけでも10万人以上、全国では100万人以上いると推定されている。

 彼らは、家賃が安い郊外の“城中村”に集まって居住し、毎朝蟻のように群れをなして都市の中心部へ向かい、夕方には疲れた身体を引きずって郊外の自室に戻り、安物の組立ベッドに倒れ込む。

農民、農民工、失業者に続く第4の弱者集団

 廉思は同書の中で、“蟻族”を中国社会で「弱者」に位置付けられている“農民”、“農民工(出稼ぎ農民)”、“下崗職工(リストラされた失業者)”に続く第4の“弱体群体(弱者集団)”として分類している。ある人はこれを評して次のように述べている。

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著者プロフィール

北村 豊(きたむら ゆたか)

北村 豊

住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト
1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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