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弱者たちを支え続けている人々こそ、米国の強さだ

Opportunity Schoolで教えてみる【その7】

  • 林 壮一

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2009年11月12日(木)

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 テイラー・ハーパーの上司であるジャフ・フリーマンから「是非、会ってほしい人物がいる」という連絡を受けたのは、10月末だった。

 紹介された45歳の黒人男性――レスリー・ウィリアムズは、大柄な男だった。それもその筈、プロを目指してNFLの下部組織、DUPAGE EAGLESでプレーしていた元フットボーラーなのだ。

レスリー・ウィリアムズ

「およそ10カ月前から、リノで暮らし始めました」

 挨拶の後、そう話したウィリアムズは牧師であった。フロリダ州で14年間、キリストの教えを説いていたが、神が「リノに行って活動しなさい」と告げたため、誰一人知り合いのいない街に移り住んだそうだ。

 新地でリサイクルビジネスを手掛け、3カ月前に自身の教会をオープンした。教会での仕事の傍ら、ユースセンターを設けて非行少年を更生させたいと語った。

「具体的にはミーティングのできる部屋、バスケットボールコート、そしてボクシングジムを設置して、問題児たちに規律を学ばせようと考えています。スポーツのほかには、山登りやキャンプなどにも行って、人生の楽しみを覚えさせながら人間性を高めていきたい、と」
「素晴らしいですね。ジョージ・フォアマンのようじゃないですか!」

 私は素直な感情を述べた。彼は私の言葉を受けると言った。

「あなたのことを耳にし、是非スタッフになって頂けないかと思いまして」
「私は非常に出張が多い身です。働ける時間が限られていますが、それでもいいのなら、喜んで」

「ギャングメンバー」に、ボクシングを

 ウィリアムズはリサイクルショップの倉庫をジムに改造するので、週に1度で構わないから、コーチとして若者にボクシングを教えてやってほしい、と話した。現在、10歳から19歳まで9名のギャングメンバーを預かっており、彼らには逮捕歴があると付け加えた。そして、そのうちの一人はボクシングを齧っており、人生をやり直すためにプロを目指すつもりらしいと説明した。

「ジムを造るとなると、かなりの費用が掛かるでしょう。リノ市内にはメキシカンのプロ選手が汗を流すジムがあり、そちらのオーナーは私の友人です。土、日はオフですから、間借りするような形でスタートするのがいいのではないでしょうか? 

プロを目指す気持ちがある子なら、週に1度では物足らないでしょうし、毎日必死で努力しなければモノになりません。その子は直にでもジムに入会して、みっちりトレーニングを積ませるべきです。ボクシングを通じて社会のルールを学ばせるというのが目的の若者になら、週に1度でも何とかなるかもしれませんが」
「そのジムのオーナーを紹介して頂けますか?」
「今、電話してみましょう」

 私は彼の目の前で、携帯電話のボタンを押した。が、残念ながら友人のジムオーナーは不在だった。

「近々、必ず捕まえます。アポイントメントを入れたら、一緒に会いに行きましょう」
「よろしくお願いします」

 会話を続けながら、私はウィリアムズに興味を覚えた。物腰が柔らかく、誠実な印象を受ける。彼の発する英語は非常に美しく、知性を感じさせる。この日は短い会話で別れたが、後日、彼とじっくり話す機会を持った。

 11月3日、私はリノの隣町、スパークスにあるウィリアムズの教会を訪ねた。ウィリアムズのオフィスで向かい合って座り、彼の足跡を語ってもらう。

コメント5件コメント/レビュー

 記事を読んでいて、日本では考えられない部分があります。それは貧困家庭出身のウィリアムズさんが大学院を卒業していることです。日本では貧困家庭であること、それだけで大学院まで行くことがほとんど出来ません。しかしアメリカのように奨学金や補助、そして自助の精神があれば、高等教育を受けることができ、このような素晴らしい人が生まれるのかもしれません。 今の日本に足りないものをこの記事に見たような気がします。(2009/11/12)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 記事を読んでいて、日本では考えられない部分があります。それは貧困家庭出身のウィリアムズさんが大学院を卒業していることです。日本では貧困家庭であること、それだけで大学院まで行くことがほとんど出来ません。しかしアメリカのように奨学金や補助、そして自助の精神があれば、高等教育を受けることができ、このような素晴らしい人が生まれるのかもしれません。 今の日本に足りないものをこの記事に見たような気がします。(2009/11/12)

弱い人を支えるのではなく、不正義と戦うと言う強い意思を見ました。このような活動は、きれいごとや、日本人の博愛主義では到底できません。子どものころから、危険と隣り合わせに生きてきた人のみがなしうるものです。10代のギャングは、危険な猛獣であり、それをどうなだめ、調教し、社会復帰させるか。日々危険な戦いでしょう。(2009/11/12)

毎回上質なレポートを届けて下さり、有難うございます。  ウイリアムズさんの環境が我々にどの程度感じ取れるかは判りませんが、宗教に向かう動機は判る気がします。私達の彼に対する思いは同情なのか、哀れみなのかと言われれば、同じ環境を経験していない以上、それは明らかに哀れみなのです。上から目線の対岸の火事なのです。私自身無宗教を装っていますが、宗教の説いているものは気持ちの良い事なので、頒布物の小雑誌などは何教を問わず割と読んでいます。 その先に金銭の臭いがするので関わらないのですが。 キリスト教に対する壁は、例えば本編中に、神が「リノに行って活動しなさい」と告げたため、といった話に有るように、神が言ったから従う、と言う姿勢です。 実際神に有った事の有る人はまずいないと思いますので、この場合上部組織の「誰か」が、人間として、組織として発言している事になりますが、それをはぐらかすかの様に神格化されてしまいます。 アメリカ人の危うさは、このキリスト教と言う宗教観が根に有る事です。 つまり、宗教は宗教、私は私、と言った様な独立した個人思想が成り立ち難い気がするのです。 そこに構造的に作り上げられた、難題の有る、「アングロサクソンの為の理屈」が介在していたらどうなのか、と思う事がしばしば有ります。日本人はキリスト教をファッションやブランド程度にしか見ていませんが、その派閥(亜種?)には凶悪なものも含まれています。それが信仰であるのか、洗脳であるのか、奥の深い事ではありますが。 なお本編のウイリアムズさんを中傷する事では無い事を断っておきます。彼の生き方はそこに神が介在しなくても人間として賞賛されるべきものです。  (2009/11/12)

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