イスラエルは1990年代半ばから、ハイテクブームが起きた。セキュリティーソフト「ファイアウオール」で世界トップ企業となったチェック・ポイント・ソフトウエア・テクノロジーズなど新興企業が羽ばたいた。現在も米ナスダック市場ではイスラエル企業が140社近くある。日本のベンチャー企業の上場はほぼゼロだ。
人口730万人の小国で、なぜ世界を驚かすベンチャー企業がいくつも出てくるのか。イスラエルのVC(ベンチャーキャピタル)の首脳などへの取材をベースに、その秘密を探ってみたい。
イスラエルは世界経済の影響から真っ先に抜け出しつつある。欧米の投資銀行などの予想によれば、イスラエルの来年のGDP(国内総生産)は対前年比で2.5〜3%増になるという。
7月からはイスラエル経済のけん引役であるハイテク部門の輸出が急回復していることが大きい。イスラエルのGDPは2008年が邦貨換算で18兆円ぐらい。このうち輸出は4兆5000億円強であり、ハイテク部門は4割弱を占めている。
イスラエル経済は2001年にITバブルの崩壊やパレスチナ自治区での紛争などで、厳しい状況に追い込まれていた。ただ、2004年から急速に回復し、2007年までの4年間は5%を超える成長を続けた。その最大の原因は年1000社程度のペースでベンチャー企業が生まれ、それが経済成長の担い手となったことが大きい。
「ノキア不在の強さ」
イスラエルには「フィンランドのノキア」のような世界ブランドの企業はない。ただ、イスラエルのハイテク業界について詳しい藍澤証券の岡田高明・執行役員は「一つひとつの企業が独創的であり、差別化できる技術を持っている。それが世界経済危機から抜け出す上で最大の強みであり、来年からも収益の大幅な回復も見込める」と指摘する。
岡田執行役員によれば、イスラエルのテルアビブ証券取引所の指数(25銘柄)についてブルームバーム社のEPS(1株当たり利益)の予想指数をもとに分析すると、25銘柄は来年の純利益の増益幅は34.4%となる。
同じように米国(S&P500、500銘柄)、欧州(ブルームバーグ欧州500指数、500銘柄)のように代表銘柄で、最終利益予想を算出すると、米国は25.4%、欧州は26.2%となり、イスラエルが上回る。
BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)平均の28.2%、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)平均の27.4%と比べても、好調さが目立つという。
岡田執行役員は「イスラエルでは毎年、大量のベンチャー企業が生まれる。医療や環境など幅広い分野で技術力のある会社が出ている。こうした企業がこれから製品を投入してくるわけで、高い経済成長が今後も見込めるのではないか」と指摘する。
日本的「失敗は容赦しない」ではイノベーション生まれず
イスラエルの有力VC、ベルテックスの創業メンバーであるデービッド・ヘラー氏に、イスラエルがなぜ、これほど有力なベンチャー企業が出てくるのか聞いてみた。
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