技術大国に飛躍したイスラエル。技術者の育成では軍隊であるイスラエル国防軍(IDF)が重要な役割を果たしてきた。イスラエルは1973年、旧ソ連の最新装備を整えたエジプトとシリアの連合軍の奇襲攻撃を受けて、初戦は大敗を喫した。これは第4次中東戦争だった。そこでIDF首脳は軍隊の装備強化のために、技術者の育成を自ら手掛けることを決定した。
1980年代に育てた技術者たちが、1990年代からのハイテク産業の勃興において重要な役割を果たしたのだ。この事情に詳しいのがIDFのドーロン・アルモグ元将軍である。
2001年からはパレスチナ自治区であるガザの治安を担当する南部方面総司令官も務めた。その後はIDFの技術エリートばかりを集めたアスロン・グローバル・セキュリティーという投資会社を設立し、傘下企業で国境防衛システムなどの製品を開発し、世界的な注目を集めている。
(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)
ベストな技術はまず国防で
―― イスラエルではIDFが技術者を育てている。高校卒業時には成績で数百人の優秀な学生を選抜し、大学で理工系の勉強をさせている。そして軍隊では技術部門に配属させ、難しい開発に従事させる。これがイスラエルのハイテクブームを支えたということなのか。
アルモグ その通りだ。イスラエルではベストなテクノロジーはまず国防で使われる。だから、優秀な技術者を育てる必要がある。
私は2001年から3年間、南部方面総司令官としてガザの治安を担当した。それこそ、8000発もミサイルが飛んできた。1万2000人が包囲網を突破しようとした。
それを食い止めたのはやはり、兵士のがんばりもあるが、技術なのだ。センサーであり、監視カメラであり、無人偵察機であり、こうした最先端の技術を使ったからこそ可能だった。
もともと、イスラエルでは家庭での教育が熱心だ。有名な英語の「ジューイッシュ・マザー(ユダヤ人の母、教育熱心な母はという意味)」があるように、しっかり子供たちを教育する。
―― 軍隊での教育はどのような形でやっているのか。
アルモグ イスラエルは移民の国であり、様々な国からやってきている。バックグラウンドがばらばらだ。軍隊が「メルティングポット」のような役割を果たす。そこで同じような国家への愛国心も教え込まれる。
IDFではテクノロジーも身につけるが、それだけでなく、鉄の意思をも身につける。これが非常に大きいのだ。
―― 軍隊では優秀な人材が技術部門で経験を積む。これが技術者として成長を促す仕組みになっているようだが。高校卒業後に数百人を選抜するが、その最上位50人ぐらいが「タルピオット」組とされる超エリート技術者と聞いたが。
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