「イスラエル 成長の啓示」

ホロコーストと向き合う

その記憶こそがイスラエルを強く結束させる

バックナンバー

2009年11月26日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 第2次世界大戦において独ナチスによって進められたホロコースト(組織的な大量虐殺)の記憶をいかに若い世代に受け継いでいくか――。このイスラエルの課題に対し、政府や経済人は様々な挑戦をしている。

 常に政治的、民族的、宗教的な亀裂が起きる国において、ホロコーストの歴史は今、どのように重要な意味を持っているのか。イスラエルで最大のホロコースト博物館である「ヤド・バシェム」の図書館部門の責任者であるロバート・ロゼッタ博士と、民間人として若者のホロコースト教育に注力する投資会社シズムのヨッシ・ボーンステイン社長に聞いてみた。

(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)

「ホロコーストはまだ、歴史ではない」
――ヤド・バシェムのロバート・ロゼッタ博士

 ―― 第2次世界大戦におけるホロコーストが終わってから、60年以上が過ぎました。こうした悲劇の歴史を若い世代がどう受け止めているのでしょうか。

ホロコースト博物館「ヤド・バシェム」のロゼッタ博士
画像のクリックで拡大表示

 ロゼッタ 若い人たちはホロコーストの歴史に興味を持っています。祖父母の世代に何が起きたのか。この国では若い世代の意識調査をしていますが、記憶が薄れたりしていることはありませんね。若いユダヤ人にとって、これはまだ歴史ではないのです。

 この国に生まれれば、家庭でも、隣人でもホロコーストの悲劇を経験した人たちがいます。その話を抜きに育つことはない。どこの家にもそれぞれの歴史があります。

 ただ、少し変わってきたのかなあと思うことはナチスの収容所での出来事を少しコメディタッチで演じるミュージカルとかが演じられたりしています。それでも、ホロコーストは依然としてシリアスな問題です。

 ―― ホロコーストを体験した人たちが高齢化していますが、若い人たちに記憶をどのように伝えていくのでしょうか。

 ロゼッタ それこそが我々の仕事なのです。確かにホロコーストを経験した人たちは高齢化し、数多く亡くなられています。だから、記録をしっかり残さなければならない。

ホロコーストの記憶が強い絆に

 ロゼッタ 私はこの博物館に1981年に来ました。その前は米国の大学でホロコーストの歴史を研究していたのです。この博物館に入り、様々な文献や証言を集めてきました。これまでにホロコーストを生き残った人の本として7000冊を集めています。

 さらに7万人ぐらいの証言をビデオで撮影しています。そして、1億2000万ものドキュメントもあります。こうした努力を今も、続けているところです。

 ―― インターネットを使った情報提供にも力を入れていますね。

 ロゼッタ これまで集めてきた大量の情報をいかに利用やすくするかが課題です。ネットを使った情報の提供は若い人たちの教育にも役立ちます。

 私はホロコースト、あるいはジェノサイド(特定集団の抹消行為)の第2世代ですが、第3世代は20歳から30歳代ぐらいです。さらに、その下の子どもたちにも利用しやすいようにしています。

 オンラインでもホロコーストの生存者らについて6万人ぐらいの情報を見ることができます。それこそ、小学生がここに来たりして、祖父のことを調べたりしています。ネットでは生存者の証言のページとかもありますしね。20万枚の写真を見ることができます。

ホロコーストが人々を強い絆で結ぶ

 ―― この博物館は2004年に建て替えられて、規模も大きくなりましたね。

 ロゼッタ もともと、この博物館は1953年にできました。ナチスの収容所から解放され、そして祖国に戻ってきた。多くの人が、記憶を記録として残したいという思いがあったからです。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



バックナンバー>>一覧

関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント1 件(コメントを読む)
トラックバック


このコラムについて

イスラエル 成長の啓示

人口730万人の小国ながら、世界屈指の「技術大国」に飛躍した。昨今の世界的な経済危機でも、先進国の中で真っ先に抜け出す。苦難の歴史ゆえ、「無限の知恵」と「不屈の闘志」が宿り、常に世界を驚かせる革新技術の芽が息吹く。「株式会社イスラエル」。その実像に迫れば、日本も「復活への啓示」を得られるだろう。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン