「中国羅針盤」

2010年、中国マネーの日本上陸が本格化する

規制緩和前夜、手ぐすねを引く中国企業、そしてファンド

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2009年11月30日(月)

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 「中国のプライベート・エクイティー・ファンドを経由した日本企業への投資案件が 増えている。裏には、中国の事業会社がいるようだ」。こう語るのは、独立系の投資顧問会社の日本人社長である。

 10年近く前に邦銀を退職し、自前の会社を立ち上げた。企業買収の仲介や、投資家の資金運用などを行なっているが、最近増えてきているのは中国企業による日本企業の株式購入に関する相談だという。

株式市場、年初来220%の上昇

 日本の株式市場は、まさに「墓場の静けさ」ともいうべき有り様だ。年初来の日経平均の上昇率は1%そこそこである。見向きもされなくなった、といっても良い。

 その一方で、欧米、アジアの株式市場は目覚しい回復ぶりを見せている。特に中国株の回復はすさまじい。

 2007年末から2008年初頭の水準までは回復していないとはいえ、上海市場のB株(外国人が売買できる株式)で年初来220%の上昇。深セン市場のB株はそれを上回る300%近い上昇ぶりだ。

 「来年から、中国企業による外国企業の株式投資の審査が緩和される。中国マネーの狙いは日本だ」。大手証券会社の中国担当部長は期待を込めてこう語る。

 これまで中国企業が外国企業の株式を取得する場合、商務部や外貨管理局の煩雑な審査が必要だったが、原則的に届出制になるという。無論、届出制とはいえ、実際には審査と同じような手続きになるのだろうが、それでも許認可と比べれば手続きは軽減され、スピードもアップする。

 「ただ、外国企業を丸ごと買う、というようなことはしないだろう」と中国担当部長は言う。資源関連の会社の株式買収を除けば、中国企業が行なった外国企業の買収は、ほとんどといって良いほど悲惨な結果に終わっている。

コネを取り込めない日系証券、邦銀

 典型的なのが、広東省恵州市の大手家電メーカーTCLグループである。テレビの生産台数では世界トップだが、その余勢を買ってフランスの電機メーカー、トムソンのテレビ部門を実質的に買収した。これを合併する形でTTEL社を設立したのが6年前である。

 しかし、欧州での事業不振は一向に改善されず、赤字を垂れ流し続けた。テレビを薄型化する開発競争にも乗り遅れ、2007年に事業は清算に追い込まれた。欧州での清算費用は2億ユーロを超え、TCLの収益は圧迫された。今は開発投資にも十分資金を回せない状況だという。

 相変わらず欧米系企業の買収に関心を示す中国企業は少なくないが、彼らのホンネは、日本企業を買いたい、というものだ。

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著者プロフィール

上場 大(かみじょう・ひろし)

中国ビジネスのコンサルティングを手がける三学経営科学研究所シニアパートナー。 1955年生まれ。投資銀行勤務などを経てエコノミストとしての活動を始めた。前職時代は、北京駐在4年間を含む延べ17年にわたり、世界の主要金融市場で勤務。企業分析、財務デューデリジェンス(投資対象の適格性を把握するために行う調査活動)などの実務に精通しており、豊富な国際経験に基づく複眼的な中国分析を行う。



このコラムについて

中国羅針盤

政治や外交が複雑に絡み合う中国の経済・産業問題。ビジネスを展開しようとする日本企業が「先進国の常識」だけを携えて不用意に踏み込めば、足をすくわれる。中国を中心に海外勤務経験の豊富なエコノミストが、足で稼いだ現地の情報を交えて、中国の今を生き抜くための「羅針盤」を提供する。

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