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難民も労働力、手厚い支援は先行投資

福祉大国スウェーデンの真実(1)難民大国

2009年11月30日(月)

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 福祉大国として知られるスウェーデン。付加価値税(消費税)25%という高い税率に支えられたこの国には、もう1つ、別の顔がある。実は、政治・経済的な理由から祖国を捨てた人々が押し寄せる「難民大国」なのだ。

 スウェーデンは戦後直後から、労働力不足を補うために移民を受け入れを開始した。働くために入国する労働移民に加え、この国特有の人道主義から難民にも門戸を積極的に開いてきた。その結果、世界のどこかで戦争や紛争が起きるたびに、大量の難民が押し寄せる難民大国となったのである。

 難民が集中した地域では、失業率の上昇や治安の悪化など社会問題も発生している。しかし、高齢化と人口減少という現実を前に、難民たちをも貴重な労働力として生かさなければ、もはやこの国の福祉は維持できない。難民が支えるスウェーデン社会の最前線を追った。

 スウェーデンの首都ストックホルムから電車で東に約1時間。トラックメーカー「スカニア」などの工場があるソデテリエ市は、スウェーデンでも特に移民が多い町として知られる。人口8万5000人に占める移民(2世を含む)の割合は約45%で、その多くが、難民としてこの国にやってきた人たちだ。

イラク難民受け入れ数、1つの自治体で米国を上回る

 最近ではイラク戦争の影響でイラク難民が急増している。2007年には、スウェーデンに難民申請したイラク人の数は1万8000人を超えた。ソデテリエ市のアンダシュ・ラーゴ市長は、「2007年にソデテリエ市に流入したイラク難民の数は、戦争当事者の米国が受け入れた数を上回った」と、あまりの急激な難民の増加に困惑する。

スウェーデンのソデテリエ市にあるロンナ団地のバス停前。ほとんどが移民系の住人だ
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 イラク戦争勃発後、ソデテリエ市にはイラク難民が約7000人も流入した。イラク難民が数多く住むロンナと呼ばれる地域では、移民(2世含む)の割合は実に8割に達し、この団地に向かうバスの車内では、さながら中近東を旅しているかのような錯覚に陥る。

 スウェーデン全体で見ても、移民に占める難民比率は極めて高い。2008年に滞在許可証を得た約9万人の移民の中で、約4人に1人が難民か、もしくは既にスウェーデンに移住した難民が呼び寄せた家族だった。

 この国には、難民受け入れに寛容な人道主義と、滞在許可証を得れば、教育も社会保障もスウェーデン人とほぼ同等の権利を与える移民政策がある。それが、世界のどこかで戦争や紛争があるたびに、祖国を捨てた難民たちを引き付けているのである。

急増は困る、しかし経済を支える不可欠な存在

 難民の急激な増加は、失業率の上昇やそれに伴う治安悪化などの社会問題を生む。ラーゴ市長は、「団地に止めてあった車が火をつけられたこともある。学校ではスウェーデン語が話せないために難民の子供が授業に付いていけず不登校になり、事件を起こすケースもある」と認める

イラク難民の急増への対応に追われる、ソデテリエ市のアンダシュ・ラーゴ市長
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 しかし、その一方で、「問題なのは、移民が増えることではない。移民流入のスピードが速すぎて、スウェーデン語教育や職業訓練が追い付かず、仕事に就けない人が増えたことが問題なのだ」とも言う。

 難民の急増に苦悩しながらも、日本と同様に高齢化と労働人口の減少という現実を直視すれば、「国境を閉じたら、スウェーデンは国としてやっていけなくなる」(ラーゴ市長)のは明らかだからである。

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「難民も労働力、手厚い支援は先行投資」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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