Arik Hesseldahl (BusinessWeek.com記者)
米国時間2009年12月31日更新 「Apple's iDecade」
21世紀に入ってからの米国の10年間を振り返ると、いい出来事はあまりなかった気がする。
思えば、滑り出しは希望に満ち、新たな千年期への期待にあふれていた。米国経済は活況を呈し、1999年の国内総生産(GDP)の伸びは6.1%、ダウ平均は1年間で2300ポイント上昇。失業率は4%にとどまり、米国は平和で、脅威の影は薄かった。
しかし、状況は無残に一変した。米国はテロ攻撃を受け、2つの戦争に乗り出した。IT(情報技術)バブルは終焉を迎えた。その後、ごく短い回復期もあったものの、金融システムが崩壊寸前に陥り、大恐慌以来の深刻な経済危機に見舞われた。希望に満ちて幕を開けた2000年代の最初の10年は、色々な意味で悲惨だった。
だが、例外もある。その筆頭が米電子機器大手アップル(AAPL)だ。同社の従業員、株主、ユーザーは、この10年間にたくさん楽しい思いをしたのではないだろうか。かつて、カナダの作家ダグラス・クープランドは、ロックバンドのR.E.M.を、「80年代に輝きを失わなかった数少ない存在の1つ」と評していた。この10年間のアップルについても同じことが言える。
暗い見通しが一変
1999年末の時点で、アップルは弱小企業に転落する運命にあるように見えた。最盛期の1995年に110億ドル(約1兆210億円)あった売上高は、1999年には60億ドル(約5570億円)まで減少。米国パソコン市場でのシェアも、1991年の9.6%から、1999年には4%弱に落ち込んだ(関連資料)。2000年9月末には、同年7〜9月期の業績に関して同社が非常に厳しい見通しを示したのをきっかけに、株価が1日で半値以上も急落したこともあった。
だがその頃、1996年に同社に復帰した創業者スティーブ・ジョブズ氏が、再び影響力を発揮し始めていた。同氏の復帰後に登場した製品には、1998年発売のパソコン「iMac(アイマック)」などがある。
iMacは大反響を呼んだが、アップルが次に手がけた一大プロジェクトは、さらに大きな反響をもたらすものだった。2001年初頭に同社は、“ジュークボックスソフト”と銘打って、デジタル音楽の管理・再生ソフトウエア「iTunes(アイチューンズ)」をリリース。さらに同年10月には、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の初代機を発売した。
iPodが世界を変えた
「iPodが世界を変えた」と言うと大げさに聞こえるかもしれない。だが考えてみてほしい。1949年に米国の一般家庭が所有していたテレビの数は計200万台で、1959年にはこれが計4200万台になった。一方iPodは、2001年末時点では出荷台数はわずか12万8000台だったのが、2009年末には累計で2億5000万台近くに達したのだ。これは一種の社会変革と言えよう。21世紀初頭という時代の象徴として、iPodほどふさわしい存在はほかにない。
2003年にはiTunesに音楽販売ストアの機能が加わり、2005年には動画の販売も始まった。2008年には、音楽販売でアップルが米小売大手ウォルマート・ストアーズ(WMT)を抜き、世界全体の首位に立った。iTunesで販売された楽曲数は世界中で80億曲を超える。
100年の歴史を誇る音楽業界は、iPodによる変化の波に飲み込まれた。1999年時点では、消費者向け音楽販売の市場規模は計390億ドル(約3兆6200億円)で、大半はCDだった。現在、市場規模は176億ドル(約1兆6300億円)で、CDは確実に衰退の道を歩んでいる。
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