火警巻(消防巻)、紅色炸弾巻、菜青虫巻、忍者巻、そして摩托罗拉巻(モトローラ巻)…。これらは今、北京で大人気の日本料理店の寿司メニューだ。現地では「アメリカ寿司」と言われている。
とても日本料理屋と思えない内装
大手家電メーカーの中国総本部もある北京市の光華路にあるこの店は、食事時ともなれば満席となる。昼の定食は75元(1元=約13.5円)からと決して安くはない。
平均客単価は150元。価格帯からみれば高級レストランに属する。従って、お客のほとんどは、いわゆる中間層から上の人々だ。
店内に入ると、わけのわからない「壁画」に度肝を抜かれる。良く言えばポップアート。悪く言えば落書き。天井にぶらさがる白い布は、多分、波頭をイメージしたのだろう。しかし、とても日本料理店とは思えない。
メニューはなんでもありだ。ステーキ、サラダ、うなぎ弁当、紙鍋(「大雪児」という)まである。そしてお約束のアメリカ寿司。
オーナーは米国籍の台湾人。台湾から米国に渡り、そこでレストラン経営に乗り出し、数年前に北京にやってきた。
当初は、握り鮨、てんぷら、しゃぶしゃぶといった、一般的な日本料理のメニューを出していたが、ほかの日本料理店との差別化ができないことや、どうがんばっても、ホンモノの日本食の味は出せないことから、思い切って、「アメリカ寿司」を出したのだという。
これが当たった。
店の一番人気は摩托罗拉卷(モトローラ巻)だという。海苔をコメの内側にして、ツナマヨネーズ、鮪を巻き込み、上に、飛び子と刻みネギ、それにゴマだれをまき散らしたものだ。このゴマだれがアクセントとなって、妙に「北京」を感じさせる。
この名前は、モトローラの中国現法の社長が大好物だったことからきているそうだが、真偽のほどは分からない。しかし、モトローラの携帯は中国でトップシェアであり、誰でも知っている名前だ。無論、商標使用料は払っていないと思う。
なぜ、こんなものが大人気なのか。
日本料理であって米国料理でもある「無国籍さ」
北京で飲食店経営のコンサルを手掛ける中国人は、こう解説する。
「普通の日本料理店は、もう飽きられています。刺身、てんぷら、それに居酒屋系のメニュー。どこに行ってもそればかりです。それに一般の中国人は生モノをあまり食べません。しかし、本格的な日本料理、ということになるとお金持ちの中国人でも敷居が高い。同じお金を払うのであれば、なじみのある中華レストランに行きます」
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