「茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」」

既存メディアの巻き返しはどこまで成功するか?

ハーストは電子ブックリーダーを開発、ジャーナリズム・オンラインもサービス開始

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2010年1月19日(火)

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 今年の米国の新聞雑誌産業は、ネット上での課金をいよいよ実行に移し、キンドルをはじめとする電子ブックリーダー上での課金及び広告料金の設定にも取り組む年になる。アップルが発表するタブレット型コンピューターに対する期待も高まっている。

 課金がどの程度成功するかにより、米国の新聞雑誌産業がどの程度の規模で生き残るのか、とりあえずの答えが今年から来年にかけて見えてくるのではないかと私は考えている。

 テレビ・映画産業も、タイムワーナーやコムキャストが提唱する、ケーブルテレビの視聴料を支払った人はネット上でも同様の動画を見ることができるTVエヴリウェア、広告収入に依存してきた動画サイトのフールーでの課金の可能性など、新たな展開が見られる。

 既存メディアがデジタルの経済圏でいかにビジネスモデルを築くか、まさに正念場に来たといえる。

 本コラムでは今年も様々な動向をお伝えしたいと考えているが、今回はメディア・コングロマリットのハーストが出資して創設した新会社スキッフと、昨年9月7日のコラム「米新聞・雑誌のネット版、課金に向けて舵を切る」でお伝えした課金代行会社ジャーナリズム・オンライン(JO)のその後の動向についてお伝えする。

雑誌出版社が開発、広告も載る電子ブックリーダー「Skiff Reader」

 スキッフは、電子ブックリーダーなどにコンテンツを配信するプラットフォームを提供し、また自ら開発したデバイスを市場に送り出すことも目的とした会社である。コンテンツには、新聞・雑誌・オンラインニュースサイト・書籍などが含まれる。昨年12月に創設が発表され、今年の早い時期にサービスを開始することを目指している。

 発端は、ハーストがMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボのコーポレートスポンサーを務め、その縁でE Inkに出資したことに始まる。この投資を通じ、ハーストは電子ペーパーが紙の代用品になりうると考えるに至った。

 もちろん、持ち運びに便利で折り曲げることもできる紙は多くの長所を持つが、その一方で一度印刷するとコンテンツをアップデイトすることができず、紙を流通させるコストも高くつく。かくして、ハーストは新聞雑誌をデジタル革命の次なるフェーズに移行させるためのプロジェクトを発足させ、新会社の発足につなげていった。

 「スキッフ(Skiff)」という社名は、辞書的には「小船」を意味する。米国人にとってもポピュラーな単語ではない。だが、同社のギルバート・フュークスバーグ社長は私に、読者に情報の海を効率よく航海してほしいという願いと、一音節でスウィートな響きの単語にしたかったのでこの単語を社名に選んだと語っている。

 スキッフは2カ所に拠点を構え、ニューヨークにはビジネスサイドを扱う30人のスタッフがおり、パロアルトの研究所には50人のエンジニアを抱えている。

ラスベガスで開催のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でお披露目された「スキッフリーダー」(スキッフ提供)
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 スキッフが開発した第1号機のスキッフリーダーは、今月、ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でお披露目された。

 価格は現時点で公表されていないが、リーダーは縦11インチ(27.9センチ)×横9インチ(22.9センチ)という大きさで、縦10.4インチ(26.4センチ)×横7.2インチ(18.3センチ)のキンドルDXよりさらに大きく、新聞や雑誌を読むのに適している。米国のA4サイズの書類を読めることも意図した大きさだという。

 現在の画面は白黒で、タッチスクリーン方式。厚さは0.27インチ(7ミリ)、重さは498グラムである。

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著者プロフィール

茂木 崇(もぎ・たかし)

茂木 崇

1970年生まれ。東京工芸大学専任講師。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞・雑誌・テレビ・デジタルメディア・広告・音楽・ブロードウェイ。1年のうち2カ月ほどをニューヨークでの取材と調査にあてている。



このコラムについて

茂木崇の「タイムズスクエアに魅せられて」

 世界の文明の十字路、米ニューヨーク・タイムズスクエア。この地に魅せられ、研究を重ねる筆者が、米国のメディア、エンターテインメント、ファッション産業などについて、縦横無尽にテーマを選び、最新動向をリポートする。

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