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戻ってきてしまった少年

Opportunity Schoolで教えてみる【その12】

  • 林 壮一

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2010年1月21日(木)

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 教室に入るなり目に飛び込んできたのは、担任を殺そうとしたあの少年だった。過去にも本連載で記したが、彼はOpportunity Schoolを巣立ったにも拘らず、新たな学校で上手くやれていなかった。

 テーラー・ハーパーも私も少年の暮らしぶりに気を揉んでいたが、年末に3週間の停学を喰らったという。私がハーパーに、「週に一度、彼の自宅に通って一緒に過ごす時間を作ろうか?」と提案した直後のことだ。

「おっ、戻って来たのか?」

 私が声を掛けると、彼はヘヘヘヘと笑った。相変わらず寝癖がついており、解けた靴の紐を自分で踏んでいるようないでたちだ。

「Have a Happy New Year!」

 おどけるように私が告げると、少年は白い歯を見せた。トラブルメイカーなのかもしれないが、私にとってこの子は、純朴な少年である。

 ハーパーが目配せをして、私を自分の部屋へ呼んだ。

「恐れていたことが起きてしまった。彼、かなりシャープな鋏でクラスメイトを脅かしたんですって。“斬りつけてやるぞ”みたいに」

 Opportunity Schoolに通わざるを得なくなった問題児である。学校側も担任も、そして同級生たちも混乱し、少年は謹慎処分となった。

「彼は、また暫くここで暮らすの?」

 私が訊ねるとハーパーは首をすくめた。

「彼の通う小学校の校長と話し合っていくわ。ここに戻すことは私が決めたの。彼の7歳の妹は、今日も真面目に学校に通っている。でも母親がコンピューターゲームばかりしているから、3週間自宅で一人で過ごすようなものなの。ならば、預かろうと思ってね」

「停学期間が済んだら、彼は今の学校に戻れるの?」
「それをこれから決めていかなきゃならないのよ」

 私は言った。

「でもさ、彼はここに戻って来たかったんでしょう? ならば、我々が支えてあげるしかないよ」

居場所がここにしかないならば・・・

 ハーパーは苦笑しながら応じた。

「Opportunity Schoolを出たり入ったりしていたら、今後中学や高校でやっていけないわ。早く集団行動ができる子になってもらわないと」
「そうかもしれないけれど、彼にはまだまだ時間が必要だよ」

 私は気になっていた少年の母親について質問した。

「まったく同じ状態ね。昨日も電話を入れたけれど、会話にならない。会えば、あなたも驚くわよ」
「是非、会いたいな。やりがいがありそうだよ」
「私たちにも、能力に限界があるからね」

「Opportunity Schoolでもきちんと学べるのだから、個人的には、彼がここで卒業証書を取ることも悪くないように感じるけれど」
「趣旨が違うわ。ここは、再生教育の場よ」
「そうかもしれないけれど、ここでなら真面目にやるというなら、ひとつの手じゃないかな」
「そういう考えも確かにあるけれどね・・・」

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長