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少年たちの人生に「セカンド・ウィンド」よ、吹け

Opportunity Schoolで教えてみる【その14】

  • 林 壮一

バックナンバー

2010年2月4日(木)

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(前回「みんななかよく さあ いこう」から読む)

「まだ、ちょっと僕の授業が残っていますので、2~3分、お待ち下さい」

 約束した時間にOpportunity Schoolを訪れると、あの代行教諭(前回参照)が言った。どうやら、理科のテスト中のようだ。

「お気になさらずに」

 私が応じるや否や、少年Bが「終わったよ」と立ち上がった。答案用紙を受け取った代行教諭は、顔を顰めながら話した。

「まだ、クエスチョンの全てに答えていないじゃないか。こんな中途半端な解答でいいのか?」
「え?」
「え、じゃない。手を抜かずにもっと真剣にやりなさい」

 少年Bは不貞腐れたような表情で答案用紙を左手に持つと、自分の席に座った。解答を書き込みながらも、視線を私に向けたり、キョロキョロしたりと落ち着かない。

 およそ5分後、代行教諭の授業が終了し、私による日本語のレッスンが始まる。

「ホワイトボードの前においで。横に並んで」

 と、私は3つの椅子を移動させた。

 少年たち3人を横一列に並べると、学校の教室らしくなる。運動神経のいい少年Cも、一から日本語を学びたいと語るので、AとBにはおさらいとして、「あ、い、う、え、お」から順にホワイトボードに記した。

 父親の部屋から銃を取り出し、学校に持っていった少年Bは、「こんなの、自分はもうマスターしたよ」とばかりにノートに落書きを始めた。

「そんなに楽勝なら、ここに来て自分の名前を書いてみろ」

 私が告げると、彼はカタカナで自身の名を書いた。きちんと覚えていた。

「よく出来た。ならば次は、あさ、あさ、あかるい あさ と書いてみろ」

 少年Bは「あかるい」が書けなかった。
 私は咎めた。

「偉そうにしている割には、昨日教えたことも覚えていないんだな」

 彼は俯いた。

「言葉を学ぶなんて、簡単じゃないぞ。人間っていう生き物は、覚えた端から、また忘れていく。その繰り返しさ。だから、クラスメイトよりちょっと出来たからといって、余裕を持たないで、ノートを見ながら復習しなさい。真面目に授業を受けようぜ」

少年が集中できない責任は

 Opportunity Schoolで少年Bと接するようになってから、私は彼の集中力の無さが気になっていた。「授業中に他所事に気を取られるな」と、ハーベスト・コーガンから注意される姿を何度も目にしている。私とマンツーマンの授業をやっていても、突然、雑談を始めようとしたことがあった。

「キミは今、何について話しているんだ? 目の前の課題と関係のあることか?」
「いえ」
「そのトピックについての会話をしたいということは、授業を中断するのか? それとも打ち切りにするか?」

 私が質すと、彼はおどおどしながら答えた。

「いいえ。ごめんなさい」

 私のレッスン中に彼を叱ったのはたった1回であったが、週に5回顔を合わせる教師たちからは、3日に1度は小言を頂戴していたようだ。

 少年Bの様から思い起こすのは、私が2005年に担当したレイン・シャドウ・コミュニティ・チャーターハイスクールの生徒たちである。10代も半ばを過ぎているというのに、彼らの多くは集中力がまったく無かった。そして大半が高校を中退していった。

 私は少年Bの頬を掌で挟みながら言った。

「学ぶ時は学ぶ。遊ぶ時は遊ぶ。もうちょっとケジメをつけよう。マナーを身に付けていないと、後々困るのはお前だ。そんな調子では海兵隊員になれないぞ」
「ごめんなさい」

 とはいえ集中力など、鍛えてどうにかなるものでもなかろう。少年Bは、誰からも仕付けられずに、ここまで成長したのかもしれない。

 彼がイジメの標的となったのは、こういった怠惰、かつ内向的な部分に上級生が嫌悪感を覚えたからではないか。

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