「マニラ便り―アジア経済の現場から」

国際会議で巨大な位置占めるアジア

ダボスで実感した新興国の著しい台頭

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2010年2月5日(金)

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 毎年1月下旬にスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラムは、今年、第40回を迎えました。私は、過去10数年、ほとんど毎年これに参加してきましたので、その変貌ぶりがよくわかりますが、それを一言でいえば、あらゆる面でのアジア新興国の著しい台頭であるといえましょう。

 私が今年ダボスで参加したセッションは、アジア経済、水問題、援助改革、気候変動、世界的不均衡是正、金融規制などですが、そのいずれでも、アジア新興国の占める位置が巨大なものになっていることを実感させられました。

 そこで、今回は「ダボスから見たアジア」と題して、アジア新興国の役割と課題がどのように論議されたかを述べてみたいと思います。もちろん、これはあくまでも私見であり、アジア開発銀行(ADB)の見解でも、世界経済フォーラムの公式記録でもありません。

すばやい政策対応で世界経済の回復リード

 今年のダボスでもっとも目立ったのは、何といっても、アジア新興国の成長への強い期待です。昨年は、アジア新興国も世界経済危機に巻き込まれてしまい、新興国が先進国の不況からの影響をまぬかれるという「デカップル論」は否定されましたが、今年はそれが復活したかのようでした。

 ただ、もともと「デカップル論」は、一昨年、サブプライム金融危機によって先進国経済が減速するなかで新興国が成長を続ける状況を説明しようとしたものであり、それが昨年の世界経済危機の下で否定され、最近のアジア新興国の力強い成長によって復活したというだけです。

 私は、昨年のダボスで、「デカップル論」について、(1)長期トレンドとしてはデカップルしている(先進国の成長率が趨勢的に停滞しているのに対し、新興国の成長率は加速している)、(2)中期の景気循環ではデカップルしていない(景気循環の波は相互に波及する)、(3)中期でも政策対応で一定程度デカップルできるだろう、と述べました。

 今年の状況は、まさにアジア新興国がすばやい政策対応によって先進国より早く不況から脱出し、世界経済の回復をリードしている状況だといえましょう。

米国経済を上回る中国経済のインパクト

 ダボスでは、アジア新興国のなかでも、中国経済が一番注目を集めていました。米国のGDPが14兆ドルあるのに対し、中国のGDPは5兆ドル程度ですが、IMFの2010年見通しでも、米国経済が2.7%成長するのに対し、中国経済は10%成長すると見込まれており、世界経済の成長へのインパクトでは中国経済が米国経済を上回っているからです。

 中国のGDPは今年中に日本のGDPを抜くといわれていますが、日中の世界経済へのインパクトを考えるときは、GDPの規模よりも成長率の違いが大きいと思われます。他方、インド経済は、IMFの2010年見通しでも7.7%の成長が見込まれていますが、GDPは1兆ドル程度であり、中国経済よりインパクトは小さくなっています。

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著者プロフィール

黒田 東彦(くろだ・はるひこ)

黒田 東彦アジア開発銀行(ADB)総裁。1944年生まれ。67年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。71年オックスフォード大学経済学修士。96年財政金融研究所長、97年国際金融局長、98年国際局長。99年7月から3年半にわたって財務官を務める。2003年3月内閣官房参与、同年7月から一橋大学大学院経済学研究科教授を兼務。2005年2月から現職。著書に『元切り上げ』『通貨の興亡』『財政金融政策の成功と失敗―激動する日本経済』など。『経済危機は9つの顔を持つ 』(8月12日発売)では、経済学者の竹森俊平氏と行った対談を収録。



このコラムについて

マニラ便り―アジア経済の現場から

アジア開発銀行(ADB)は世界の67カ国が加盟する国際機関であり、1966年に創設されて以来、その本部はフィリピンのマニラにあります。そして、北はモンゴルから南はインドネシアまで、東は太平洋島嶼国から西はグルジアまで、広くアジア・太平洋の開発途上国の経済発展を支援しています。そこで、「マニラ便り―アジア経済の現場から」と題して、日本から見たものとは少し違ったアジア経済の現場に関する情報を発信していきたいと思います。

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