「中国“A女”の悲劇」

番外編その1 中国の婚恋サイトで、セイントセイヤが大活躍?

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2010年2月10日(水)

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 「聖闘士星矢」(車田正美作)というコミック、アニメをご存じだろうか。

 ちょっと懐かしい! と思う方も日経ビジネスオンラインには多そうだ。読みは「セイントセイヤ」となる。この「聖闘士」がいま中国で急増中。ただし、活躍の場所は婚恋(婚姻恋愛)サイト。最初の文字の「聖」は「セン」と読むのだが、同じ読みの「剰」という字を当てはめている。

 「中国“A女”の悲劇」の中でも(2008年3月14日掲載、リンクはこちら)お話ししたように、中国では「売れ残り」の、でも仕事はデキル女たちを「剰余」の「剰」(あまり)という文字を用いて「剰女(セン・ニュイ)」と呼ぶことがある。が、それではあまりに侮辱的だということから、同じ発音の「聖女」(セン・ニュイ)という文字を当てはめた。しかし、「聖女」は「永久に結婚しない、聖なる女性」ということで、かえってその皮肉度は増すばかり。そんなお話をご紹介した。

 そして昨年あたりから、今度は「聖」の文字を「剰」に変えるという逆方向型が始まった。「聖闘士星矢」の「聖闘士」の部分にある「聖」の文字だけを、同じ発音の「剰」に置き換えて、「剰闘士」という造語がネットに出現したのである。

 これは「売れ残った闘士」という意味で、「剰女」(売れ残り女)および「剰男」(売れ残り男)たちが、婚恋サイト等を通して自分の伴侶を求めようと必死で闘っている姿を揶揄したものだ。

 しかし中国の実態を見れば、揶揄などという呑気なことは言っていられない。

 ある調査によれば、中国はいま「単身潮」(独身潮流)にあり、北京、上海、広州等の都市における結婚適齢期の男女の独身率はいずれも30%を突破している。社会のニーズと婚姻恋愛観の変化により、ネットによる婚姻紹介マーケットは「高速発展期」に突入、婚恋サイトはインターネット業界の新しい創業のホットスポットとなっている。

遠藤誉の新刊が
当サイト連載をベースに登場!

 中国は、「共産党が支配する社会主義国家」がこの地球から消えていくのを防ぐため、個人による金儲けを解禁、奨励してきた。その結果、中国経済は大躍進を遂げ、人々はリッチになった。しかし、その一方で、職に就けない大卒者が七百万人にも達し、階級差が生まれ、農民たちは最下層で貧しさに喘いでいる。さらに結婚できない女性が増え、次代を担う子供たちの人口増加率も減少している……。

 国は生き残ったが、果たして「社会主義」は生き残ったのだろうか?

 昨年、60周年を迎えた新中国は、経済だけは加速しながら、その影で様々な問題が浮き彫りになってきている。「銭」に向かって進んだ結果、今何が起きているのか?

中国で生まれ育った作者ならではの視線で、「金儲け」と「社会主義」の矛盾とからくりに迫る。

 日経ビジネスオンライン連載の「中国“A女”の悲劇」をベースに、改革開放によって中国がどう変わったのかを庶民目線で斬り込み、中国の現在を軽妙なタッチで描いた1冊。

 おまけに今年の2月14日は中国の春節(旧正月)に当たるため、中国語で「情人節」と呼ばれているバレンタインデーと重なり、婚恋仲介業者は大わらわ。婚恋サイトは激しい競争を展開し、各種の「相親」(お見合い)イベントが真っ盛りである。

 今回は「剰闘士」たちの実態をご報告しよう。

「剰闘士」の分類と闘士レベル

 中国語のネットで「剰闘士」と入力すると、親切なことに「剰闘士ってなあに?」という質問が何種類も出てくる。それらをクリックし、一応私なりに整理してみると、概ね次のようなことになる。ここでいう「剰客」とは「剰女」および「剰男」のことで、これは婚恋サイト運営者や婚恋仲介業者から見れば「お客さん」なので、総称して「剰客」という。

25歳〜27歳の剰客:初級剰客。
中国では25歳が結婚適齢期の最初のボーダーラインとされているので、「剰余度」が初級。将来の伴侶を探し求めるべく奮闘し続けるだけの気力を十分に持っているので、授けられた呼称は「剰闘士」。
28歳〜31歳の剰客:中級剰客。
勝利をつかむチャンスはやや少なくなっている。仕事が忙しく異性の友人に会っている時間が取れない。しかしここで「必勝」を目指さなければ、次のレベルに上ってしまう(落ちてしまう?)ので、頑張らなければならない。よって授けられた呼称は「必剰客」。

※中国語ではピザハットを「必勝客」と書く。この「勝」の文字の発音は、またもや「セン」。「勝」と「剰」の文字の発音の共通性を用いて、「必勝」を「必剰」に置き換えたもの。こういった時のセンスは、さすが漢字の国。

 次あたりからいよいよレベルが上がってくる。

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著者プロフィール

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

 1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士、筑波大学名誉教授、東京福祉大学・国際交流センター センター長。(中国)国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、(日本国)内閣府総合科学技術会議専門委員、中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。

 著書に『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『チャーズ』(読売新聞社、文春文庫)、『中国大学全覧2007』(厚有出版)、『茉莉花』(読売新聞社)、『中国がシリコンバレーとつながるとき』『中国動漫新人類〜日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書) ほか多数。2児の母、孫2人。



このコラムについて

中国“A女”の悲劇

中国にも「負け犬」はいた。自らの力で高い社会地位を勝ち得、年収も男に負けない。容貌も美しい。そんな隙がない彼女=「A女」たちには、なぜか結婚相手が見つからないのだ。悩みは深く、自慢の娘に結婚相手を探そうと、数千人の父母たちが、日本で言うところの「釣書」を持って公園に集まるほど。この現象の背景にはなにがあるのか。大好評の連載『中国動漫新人類』に続き、遠藤誉博士が中国社会にふたたび挑む。

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