経済観察報記者 周潔
今年1月から車両購置税(自動車取得税)の優遇率が引き下げられたことによる波紋が、自動車市場に早くも広がっている。
本紙(経済観察報)記者が北京市内の複数のディーラーを訪れると、昨年12月に見られたような消費者が(優遇率引き下げ前の駆け込みで)先を争って契約書にサインする“過熱現象”はすっかり影を潜めていた。
「昨年からのバックオーダーがたまっていたため、納車台数は1月も依然として多かった。しかし新規の受注は明らかに減った」。ディーラーの店員たちは異口同音にそう語った。
ディーラーの販売姿勢が180度転換
自動車市場の先行きについて、業界内では今も楽観的な見方が少なくない。だが、北京亜運村自動車交易市場の元総経理で、販売現場の最新情報に詳しい蘇暉は楽観論に異を唱える。
「統計上は1月の販売も好調だが、それは表面的なものだ。なぜなら、統計データには昨年末のバックオーダー分が含まれているからだ*。北京、杭州、長春などの大都市のディーラーでは、1月の新規受注は前月比10%以上も減っている」
*中国汽車工業協会が毎月発表している統計は、販売台数に関してはメーカーの出荷ベースの実績を基にしている。このため、販売現場での新規受注の増減を短期的には反映しにくい傾向がある。

中国汽車工業協会が今年初めに発表した予測によれば、中国の自動車産業は2010年も好調を維持し、年間の生産販売台数は前年より10%前後増加して1500万台(編集部注:2009年の販売台数は前年比46%増の1360万台)に達する可能性があるという。
「つまり、毎月平均120万台を販売しなければならないということだ。1月の新規受注はこれに達しなかった様子だ」。蘇暉はそう指摘する。
昨年末の“過熱現象”の最中に、販売業者は消費者の飢餓感をさかんにあおっていた。昨年12月、記者が消費者を装ってある一汽フォルクスワーゲンのディーラーを訪ねると、応対した店員は「ご希望のクルマは在庫がないので、納車待ちのリストに並んでいただきます。早めの納車が希望なら上乗せ金が必要です」と強気だった。
ところが、1月に入るやいなやディーラーの姿勢は180度変わった。この店員はわざわざ向こうから電話してきたうえ、記者にこう告げたのだ。
「ご希望のクルマの在庫があります。さらに6000元(約7万8000円)を値引きしましょう」。
このケースは決して例外ではない。既に相当な数のディーラーが、販売戦略の重点を価格の“上乗せ”から“値引き”に移していることが、取材を通じて明らかになった。しかも、そんなディーラーがどんどん増えているのだ。
1年前の2009年1月、中国政府は排気量1600cc以下の小型乗用車の車両購置税を車両価格の10%から5%に半減する優遇策を実施した。これが(金融危機の影響で落ち込んでいた)自動車販売を急回復させる原動力になったのは明らかだ。昨年の総販売台数に占める排気量1600cc以下のクルマの比率は実に70%に達した。しかし景気の回復を受け、政府は今年1月から優遇率を縮小し、車両購置税は5%から7.5%に引き上げられた。
「昨年12月の“過熱現象”は、優遇率の引き下げが決まったのが引き金だったが、そこから2つの副作用が起きた。まず、本来なら今年生じるはずだった新規需要が大量に前倒しになり、1月以降の販売不振を招いた。さらに、受注集中でメーカーの生産が追いつかず、納車待ちの日数が大幅に延びてしまった」(蘇暉)。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。











