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賢く強く健気な子に、何もしてあげられないのか?

Opportunity Schoolで教えてみる【その16】

  • 林 壮一

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2010年2月25日(木)

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(前回「「僕はママが好きです!」競い合うように日本語を話す少年たち」から読む)

 教室の空気が重かった。前方で、テイラー・ハーパーが腰に手をやりながら、大声で少年Aに説教をしている。Aは下を向いたまま微動だにしない。

 私が荷物を置くと、テイラーが振り向きながら話した。

「ソウイチ、今日、この子にはあなたのレッスンを受けさせない。Cだけみてやってくれる?」

 Aは授業にまともに参加せず、課題もこなさず、宿題にも手を付けずに登校した。そのペナルティーとして〈飴の時間〉を奪われたのだ。

「あなたが決められたことをきちんとこなしていれば、こんな事にはならないのにね」

 巣立った筈のOpportunity Schoolに戻り、更に問題を起こしてしまうA。テイラー・ハーパーもハーベスト・コーガンも、苦虫を潰したような表情でAを見詰めている。

 気にはなったが、私がボランティアとして働ける時間は1時間強に過ぎないので、Cを相手に日本語のレッスンを始めた。

「今日は、日本語で数を数えてみよう」
「はい!」

 頭を刈上げたCは溌剌としていた。自ら、椅子をホワイトボードの前に移動させ、食い入るような視線を向けてくる。
 チラチラと私の方を見るAは、ハーパーの指示で教室の隅に追いやられてしまった。

いきなり日本語で1000まで数えられるようになった少年C

「いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう」

 8の発音が難しいようだが、Cは大声で私が教えた日本語のカウントを繰り返す。10までは、7回くらいでマスターした。ならば、と99まで進めてみると、これも難なくこなす。

「じゃあさ、今日は1000まで数えられるように頑張っちゃおうぜ」

 私がそう告げると、Cはニッコリと微笑んだ。
Cの吸収力は大したものだ。先日、オレゴン州に引っ越していったBの集中力とは比較にならない。乾いたスポンジが水を吸収するが如く、覚えていく。

 一通り伝えた後、私は「623」とか「759」とか「931」等、適当に数字を組み合わせて、読んでご覧、とやってみた。
 8、80、800の発音には苦しんでいたが、Cは1時間弱で完璧に理解した。

「忘れちゃうと困るから、ノートにも書いておくね」

 と、必死でペンを動かす。

「凄いなぁ。もうマスターしちゃったんだね」

 私が褒めると、得意気に鼻の穴を膨らませた。

「先生、もう少し時間があるなら、ボクシングのミット打ちもやってよ」
「よしきた」

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