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北京郊外に出現した高学歴低所得者のコロニー

大学は出たけれど…故郷に錦を飾れない「蟻族」の苦悩

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2010年2月26日(金)

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唐家嶺的新年

経済観察報記者 胡芳潔/陳文雅

黄楊は床に敷いたマットレスを持ち上げると、部屋の壁に立てかけた。そうしなければ、隣人から借りている小さな食卓と腰掛けを置くスペースもないほど部屋が狭いのだ。彼と同棲しているガールフレンドの小李(「小」は年下の人物の姓の前につける呼称)は、部屋の入り口の前にある練炭コンロで食事を作っている。濃い煙がうっかり目に入ってしまい、彼女は何度も涙をぬぐった。

 四川省出身の黄楊は今年26歳、大学を卒業してもう3年になる。彼は北京のCBD(中央ビジネス地区)の近くにあるIT(情報技術)企業の社員だが、住んでいるのは中関村*の北の郊外にある「唐家嶺村」だ。毎日の通勤距離は往復60kmに及び、地下鉄とバスを2回ずつ乗り継がなければならないため、所要時間は往復4時間もかかる。

*北京市街の北西部にあり、大学、政府の研究機関、IT企業などが集中する地区。「中国のシリコンバレー」として世界的に有名。

IT企業の若手社員が集まり住む唐家嶺

 「ガールフレンドが(唐家嶺村の南隣にある)上地の会社で働いているから、あえて引っ越さないのさ。僕も以前は中関村のIT企業に務めていた。あの会社は商売がうまくいかなくて給料の遅配や未払いが日常茶飯事だったけれど、新しい職場を探すのは簡単じゃない。結局、背に腹は代えられず、今の会社に転職したんだ」。黄楊はそう事情を打ち明ける。

 「深夜まで残業しなければならない時は、地下鉄もバスもなくなってしまうから家に帰れない。仕方なくオフィスの中で一夜を明かすんだ」。黄楊は真っ赤に充血した目をこすりながら、深く息を吸ってこう続けた。「とにかく疲れたよ。旧正月の前後は仕事が少ないから、社長に休暇届を出してゆっくり休むことにしたんだ」

 仕事に追われる黄楊は、個人の生活に気を配る余裕がない。食事は自分の部屋で作る日もあるが、たいていは近所の店で大餅(お好み焼き)や饅頭を買ってすませることが多い。

 部屋に友達を呼ぶことも少ない。と言うのも、友人たちと食卓を囲んで一緒に座り、少しは格好がつく品数の料理を並べるには、まずベッド代わりのマットレスを部屋の外に出さなければならないからだ。

 春節(旧正月)が間近になると、故郷から遠く離れた外地で働く若者たちは、必死で切符を手に入れて帰省しようとする。唐家嶺村の貸部屋の住人たちも例外ではない。表通りにも裏通りにも、大小の荷物を抱えて列車の駅やバスターミナルに向かう若者の姿がある。

 道路脇では露天商が屋台を広げ、大声を出して春節の飾り物や爆竹を売っている。しかし立ち止まる者はほとんどいない。道を歩いているのは“通りすがり”の外地人ばかりで、彼らは(入りきれない荷物を詰め込む)スーツケースやカバンにしか興味がないのだ。

 唐家嶺村の旧正月は、彼ら外地人のものではない。それはこの村に昔から住み、外地出身の若者に部屋を貸して生計を立てている村民たちのものである。貸部屋の住人にとって、この村は本当の我が家ではなく、しばらく足を休めるためだけの仮の宿に過ぎない。

 では、故郷こそが彼らの本当の我が家なのか? 毎日心の中で思い、脳裏をただよい、夢にまで見る愛しき故郷。ところが実際には、唐家嶺村の全ての外地人が心のままに帰れるわけでないのだ。

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