「中国羅針盤」

上海万博は大迷惑

駐在員はアテンドに駆り出され、業績悪化も

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2010年3月29日(月)

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 「このたび、上海に赴任することになりました」
 銀行に勤務する友人から転任の挨拶状が届いた。彼はつい数年前に北京から日本に戻ってきたばかり。上海は2度目の駐在となる。

 「アジア金融の中心となりつつある上海でのご活躍を祈ります」とメールを打つと、早速、返信があった。「実際は上海万博のアテンド要員です。家内も動員してのツアコン稼業ですよ」。

アテンド要員として駐在員を増やすところも

 銀行のアテンド役ともなるとヒラ社員では務まらない。副支店長クラスの肩書を持ち、中国駐在の経験もあり、かつ奥さんも中国の生活に慣れていることが条件となる。そこで彼に白羽の矢が立ったわけだ。

 上海万博まであと1カ月。日本でも万博ツアーの募集が花盛りだ。日本館や日本産業館も建設され、トップクラスの日本企業が出展する。協賛する企業も少なくない。ということになれば、企業関係者の訪問も激増する。

 パビリオンに出展する日本企業だけではなく、その取引先や銀行などは、押し寄せるお客を予想し、アテンドの準備に余念がない。冒頭の銀行のように、わざわざアテンド要員として駐在員を増やすところもある。

 「もう、仕事になりませんね。」とぼやくのは、上海に中国本社を置くある日本企業の幹部である。

 「うちは、万博に出展していることもあって、まず、会場に人を張りつけなければなりません。もちろん本社からトップをはじめ、役員がきます。取引先も来るでしょう。当然、中国内外の代理店も招待します。役員の知り合いとか、取引先の関係者といった便乗組もいます。放っておくわけにもいきません。これらの方々にすべて社員をつけて案内しなければなりません」

ホテルもみな“万博価格”で通常の倍以上

 「それに車の手配、ホテルの予約、食事の世話。考えただけで気が遠くなりますし、費用を考えたら背筋が寒くなります。車も、ホテルもみな“万博価格”で通常の倍以上の値段です。VIPにはベンツやレクサス、一般のお客はビュイック、人数が増えればバスと、いろんな車種を手配しなければなりません。特にバスは品薄でなかなか確保できません。トイレ付のバスのチャーター料金にはプレミアムがついてます」

 この会社は、日本人幹部、日本語ができる中国人社員を全員動員し、土日の休みなしで、アテンドの体制を整えている。万博期間中、営業活動はほぼストップする。「今年の上海地区の売り上げは、前年割れ間違いなしですね」と彼は諦めきった表情でいう。

 そして、こう続けた。

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著者プロフィール

上場 大(かみじょう・ひろし)

中国ビジネスのコンサルティングを手がける三学経営科学研究所シニアパートナー。 1955年生まれ。投資銀行勤務などを経てエコノミストとしての活動を始めた。前職時代は、北京駐在4年間を含む延べ17年にわたり、世界の主要金融市場で勤務。企業分析、財務デューデリジェンス(投資対象の適格性を把握するために行う調査活動)などの実務に精通しており、豊富な国際経験に基づく複眼的な中国分析を行う。



このコラムについて

中国羅針盤

政治や外交が複雑に絡み合う中国の経済・産業問題。ビジネスを展開しようとする日本企業が「先進国の常識」だけを携えて不用意に踏み込めば、足をすくわれる。中国を中心に海外勤務経験の豊富なエコノミストが、足で稼いだ現地の情報を交えて、中国の今を生き抜くための「羅針盤」を提供する。

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