「このたび、上海に赴任することになりました」
銀行に勤務する友人から転任の挨拶状が届いた。彼はつい数年前に北京から日本に戻ってきたばかり。上海は2度目の駐在となる。
「アジア金融の中心となりつつある上海でのご活躍を祈ります」とメールを打つと、早速、返信があった。「実際は上海万博のアテンド要員です。家内も動員してのツアコン稼業ですよ」。
アテンド要員として駐在員を増やすところも
銀行のアテンド役ともなるとヒラ社員では務まらない。副支店長クラスの肩書を持ち、中国駐在の経験もあり、かつ奥さんも中国の生活に慣れていることが条件となる。そこで彼に白羽の矢が立ったわけだ。
上海万博まであと1カ月。日本でも万博ツアーの募集が花盛りだ。日本館や日本産業館も建設され、トップクラスの日本企業が出展する。協賛する企業も少なくない。ということになれば、企業関係者の訪問も激増する。
パビリオンに出展する日本企業だけではなく、その取引先や銀行などは、押し寄せるお客を予想し、アテンドの準備に余念がない。冒頭の銀行のように、わざわざアテンド要員として駐在員を増やすところもある。
「もう、仕事になりませんね。」とぼやくのは、上海に中国本社を置くある日本企業の幹部である。
「うちは、万博に出展していることもあって、まず、会場に人を張りつけなければなりません。もちろん本社からトップをはじめ、役員がきます。取引先も来るでしょう。当然、中国内外の代理店も招待します。役員の知り合いとか、取引先の関係者といった便乗組もいます。放っておくわけにもいきません。これらの方々にすべて社員をつけて案内しなければなりません」
ホテルもみな“万博価格”で通常の倍以上
「それに車の手配、ホテルの予約、食事の世話。考えただけで気が遠くなりますし、費用を考えたら背筋が寒くなります。車も、ホテルもみな“万博価格”で通常の倍以上の値段です。VIPにはベンツやレクサス、一般のお客はビュイック、人数が増えればバスと、いろんな車種を手配しなければなりません。特にバスは品薄でなかなか確保できません。トイレ付のバスのチャーター料金にはプレミアムがついてます」
この会社は、日本人幹部、日本語ができる中国人社員を全員動員し、土日の休みなしで、アテンドの体制を整えている。万博期間中、営業活動はほぼストップする。「今年の上海地区の売り上げは、前年割れ間違いなしですね」と彼は諦めきった表情でいう。
そして、こう続けた。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




