「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」

下水から作る「再生食用油」を根絶せよ!

中国全土で年間200万〜300万トンが調理に使われている

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2010年3月30日(火)

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 2010年3月17日付で全国紙「中国青年報」が報じた“囲剿地溝油(下水溝油を包囲殲滅する)”という表題の記事は、中国全土に大きな反響を巻き起こした。この記事は“地溝油(下水溝油)”について、湖北省武漢市にある武漢工業学院“食品科学与工程学院(食品科学・工学部)”の教授で、全国糧油標準化委員会油料・油脂ワーキングチームのチーム長である何東平にインタビューしたものであった。

 ところで、“地溝油”とは何か。筆者は2006年12月15日付の本リポートで「え!中国では下水溝から食用油が作られる?」という“地溝油”に関する記事を掲載したが、“地溝油”とは調理場から排出された食用油が下水溝に溜まった物を意味する。

 筆者は北京と広州で駐在経験を持つので、家では妻が本場で習得した中華料理を作ることが多く、必然的に食用油の使用量も多い。調理鍋や食器に残った油は洗い流されて庭にあるマンホール(汚水槽)に流れ込み、そこで固形分や油分が沈殿し、上澄み液が浄化槽へと送り出される。筆者はこのマンホールを年に数回清掃するのだが、マンホールの中は腐敗臭に満ち、不気味な薄桃色の物質がマンホール内にこびり付いたり、漂ったりしている。筆者の清掃作業はこの気持ち悪い物質を取り除くことなのだが、これこそが正に“地溝油”なのである。

“地溝油”で生計を立てている人が多数存在

 “地溝油”は一般に飲食店の厨房から排出されて下水溝に溜まったものだが、中国にはこの“地溝油”で生計を立てている人々が多数存在する。下水溝から汲み集められた“地溝油”は、一昼夜かけて濾過された後、加熱、沈殿、分離といった複数の工程を経て、無臭の「再生食用油」へと変身を遂げる。この「再生食用油」は低価格で飲食業者に販売され、それが飲食店で調理に使われているというのである。

 同記事が報じた何東平教授の発言の要旨は次の通り:

[1] 自分の推計では、中国では年間に200〜300万トンの「再生食用油」が使われている。
[2] 中国人が調理に使用する動植物油の消費総量は年間で約2250万トンであるから、「再生食用油」の使用量はほぼ10%に相当する。従い、レストランなどで外食を10回すれば、そのうちの1回は「再生食用油」を使った料理に当たる勘定になる。
[3] 医学的研究によれば、「再生食用油」に含まれる最も危険な成分は発がん性物質のアフラトキシンであり、その毒性はヒ素の100倍にも及ぶ。

 同記事によれば、昨年9月の新学期が始まった早々に、武漢工業大学の食品科学・工学部の4年生9人は、武漢市における“地溝油”の状況を調査する課題を与えられた。彼らは古着を着て、軍手を付けて、毎日のようにレストランやホテル周辺の下水溝に蹲(うずくま)って“地溝油”のサンプルを採集した。折よく季節は秋から冬にかけてで、気温が低いために“地溝油”は半凝固の状態となり、臭いも夏場ほどひどくなかったが、学生たちにとっては苦しい作業であった。そうした実地調査を経て判明したことは次の通りである:

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著者プロフィール

北村 豊(きたむら ゆたか)

北村 豊

住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト
1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員



このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。

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