• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

枯渇に瀕する華北平原の地下水

長年の汲み上げ過剰で地下水位が急低下

  • 経済観察報

バックナンバー

2010年5月7日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

打井

経済観察報記者 陳勇

4月28日の午後は風が強く、太陽が燦々と照りつけていた。李成軍は門前のアオギリの根本にあぐらをかいて座り、煙草をふかしながら、物思いにふけるような目で畑の方を眺めていた。

 この時彼は、井戸をもう1本掘るべきかどうか、心の中で迷っていた。

 「前に掘った井戸は涸れかかっていて、畑に水をやれない。だが、新しい井戸を掘るには数万元かかる」

 そう打ち明ける李成軍は、河北省ケイ台市柏郷県寨里西村の村民である。彼の話によれば、村では地下水の水位がここ数年急速に下がっており、井戸が深くなる一方だという。齢50過ぎの李成軍は、10ムー(約66.7アール)余りの畑で小麦とトウモロコシを輪作している。1年間の現金収入は6000~7000元(約8万1000円~9万5000円)ほど。井戸掘りにかかる費用は大変な負担だ。

2000人の村に1000本の井戸

 李成軍は、地下水位の急低下に悩む華北平原*の幾多の農民の1人に過ぎない。華北東部の京津冀(北京市、天津市、河北省)一帯は、世界で最も地下水位の低下がひどい地域の1つなのである。

*華北地方の黄河流域に広がる大平野。中国有数の穀倉地帯だが、降水量が少なく、農業、工業、生活用水の多くを地下水に頼っている。

 政府の公式発表によれば、華北地方では地下水の汲み上げ過剰が年間1200億立方メートルに達する。河北省水利庁の調査では、同省内には地下水位の低下が著しい地区が2009年時点で20あり、その総面積は4万平方キロメートルに及ぶ。

 中でも柏郷県の状況は深刻だ。李成軍が住む寨里西村の人口は2000人弱だが、村内には1000本近い井戸があり、平均2人に1本という多さである。

 結局、李成軍は隣近所の6世帯と共同で井戸を掘り、費用を分担することに決めた。だが、彼らをいかに説得して資金を集めるかが、目下最大の頭痛の種になっている。

 説得に何度か失敗した挙げ句、李成軍は村の長老である村長の高玉柱に仲立ちを頼んだ。高玉柱によれば、畑の面積が農家ごとに違うため、意見をまとめるのはとても難しいという。畑が狭い農家は(井戸を掘らずに)他から水を買った方がいいと考え、畑が広い農家は新たに井戸を掘る方が割に合うと考えるからだ。

 「前回は400メートル掘って4万元(約54万円)もかかった。今度は500~600メートル掘らなければならないかもしれない。掘った後に20~30年間使えるならともかく、最近は数年で涸れてしまうので、また掘らなければならない。そんなお金はとても出せないさ」。村民の1人で、畑が3ムー(約20アール)しかない馬三は不満を漏らす。

 李成軍の土地にある井戸は深さ400メートルで、以前は30ムー(約2ヘクタール)の畑を灌漑できる水量があった。ところが、掘って10年も経たないうちに水量が減り始めた。

 「4万元もかけて掘ったのに、もうすぐただの洞穴になってしまう」。李成軍は悲痛な表情でため息をつく。

 一方、井戸掘りを生業とする専門業者にとって、地下水位の急低下はまたとない商機になっている。

コメント4件コメント/レビュー

いつも「経済観察報」の質の高い記事、大変参考になります。記事の内容とは関係ないのですが、翻訳のレベルも相当高いですね。前から気になっていたのですが記事には翻訳者の名前が出てきません。これはNBOだけでなく業界の慣習なのでしょうか?私は入れたほうがよいと思います。ぜひご検討ください。(2010/05/07)

「中国発 経済観察報」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつも「経済観察報」の質の高い記事、大変参考になります。記事の内容とは関係ないのですが、翻訳のレベルも相当高いですね。前から気になっていたのですが記事には翻訳者の名前が出てきません。これはNBOだけでなく業界の慣習なのでしょうか?私は入れたほうがよいと思います。ぜひご検討ください。(2010/05/07)

もうすでに中国は、メコン川の上流に多くのダムを作り下流の流量を制限して国際問題になっています。■更に、日本の水源地の山林を買い漁っているとの情報もあります。■「水と安全はタダ」などと馬鹿なことを言っていると、いつの間にか東京の水源が中国に押さえられて、今の数百倍の水道料金を支払わなければ、水道も使えない時代が目の前に迫っているかも知れません。■「抑止力を勉強して初めて知った」などと呆けたことを言っている首相にはすぐに降りていただかないと、水も安全もなくなってしまうのではないでしょうか。(百姓)(2010/05/07)

ローマを始め地中海の各都市でローマ時代の水道の遺構が残るように、ローマ帝国は社会インフラの整備に力を注いで繁栄を築いた。これに比べ、農村、都市部を問わず中国の現状はどうであろうか。地下水の汲み上げは地盤沈下と塩害、フッ素や砒素汚染を発生させているという。今年は全国的に降雨不足も伝えられている。中国の行く末は、環境、食糧、安全問題など日本も無縁ではいられない。(2010/05/07)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長