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極めて異例  クビになった「暴走司令官」

マクリスタル駐アフガン米司令官解任の真相

2010年6月30日(水)

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 スタンリー・マクリスタル駐アフガニスタン米軍司令官が更迭された。

 戦争最中に、しかも今後の戦争の行方を左右する決定的に重要な時期に、現地司令官を解任するという事態は、米国の戦史史上でも極めて異例のことである。そんな異例の事態が起きた背景には何があったのだろうか。なぜマクリスタルはこの時期に「政権批判」を行ったのだろうか。

 「暴走司令官」騒動の背景を分析していこう。

インタビューではなく私的な会話

 「米アフガン戦略 不協和音 政権批判の司令官 更迭も」

 6月24日付『朝日新聞』はこのような見出しで、この問題を大きく報じた。欧米各紙ともに「マクリスタル司令官が政権上層部を批判し、政権内部の亀裂の深さが明らかになった」という文脈でこの問題を報じた。

 そもそもこの問題は、米誌『ローリング・ストーン』がマクリスタル司令官およびその側近たちに「インタビュー」をした記事を掲載し、6月22日にインターネットでその記事が報じられたことに端を発している。

 「暴走司令官」という見出しのこの記事は、マクリスタル司令官が09年1月に国防総省でオバマ大統領と初めて同席した際のことを、「居心地悪そうにびくびくしていた」と回顧したと報じている。またアフガンへの増派戦略に批判的だったバイデン副大統領について、「バイデンって誰だ」と馬鹿にするような発言をしたことも記述されている。このほか、ジョーンズ大統領補佐官やアフガン担当のホルブルック特使等を批判するコメントも掲載されている。

 多くの読者は、この『ローリング・ストーン』の記事の原文を目にすることなく、この記事の内容を伝える他のメディアの記事を読み、「このような批判をしたマクリスタルは何を考えているのか。首を切られて当然」との印象を持ったことだろう。

 だが、『ローリング・ストーン』誌の記事を実際に精読してみると、おかしな点に気づくはずである。同誌の記事で引用されているのは、ほとんどが「インタビュー」というよりも「私的な会話」であり、「ボスは~と言っている」といったような匿名のマクリスタル司令官の側近たちのコメントが中心になっている。

 「これはプライベートな会話ではないか。記事になることを知らずに発言しただけなのではないか?」

 との疑問をすぐに抱いたのは私だけではないだろう。実際『ニューヨーク・タイムズ』紙のヘレン・クーパー、トム・シェンカーとデクスター・フィルキンスは、6月23日付の記事の中で、

 「このローリング・ストーンの記事の著者マイケル・ハスティングスは、マクリスタル大将の側近サークルに対して私的で親密な関係を持つことを許されたようだ」

 と不思議そうに書いており、その理由として、

 「ほとんどのコメントが、マクリスタル大将とその側近たちがリラックスしてくつろいでいるバーやレストランのような場所で、彼らが無防備な状況で発せられたように思われるからである」

 と書いている。私もこの三氏とまったく同様の印象を抱いた。この点に関して『ワシントン・ポスト』紙のグレッグ・ジャフとアーネスト・ロンドノは、

 マクリスタル司令官のメディア担当補佐官で民間から任用されたダンカン・ブースビー氏が、明確な取材ルールを確立せずに司令官側近たちと会話をすることをハスティングスに認めてしまった」

 との米軍関係者のコメントを掲載している。

コメント4件コメント/レビュー

ローリング・ストーンズ誌の問題の記事を読み、"Almost Famous" (邦題は「あの頃ペニーレインと」)という映画を思い出しました。まさに同誌の記者が1970年代にロックバンドのツアーに同行取材し、本件に似た葛藤に見舞われる話です。さて、オフレコと言われたことを書くのはルール違反ですが、本件はもっと複雑な状況であるように見えます。上記の映画でも、バンドのメンバーたちは、何を書くかわからない記者に対して警戒し敵意を持ちつつも接近し、dirty little secretsを見せてしまい、これが後に大問題に発展します。本件では、明示的にオフレコではなかったということならば同様な状況のように見えます。オフレコでない発言については、録音してあれば正確性やout of context な引用でないことを担保できますから、むしろ、あらためて発言者に確認すれば撤回される可能性が高いコメントを「いいですか?」などと聞くことの方が問題だとも言えます。事前検閲を認めることになるからです。公の場での失言ですら「誤った形で伝えられ遺憾だ」などとのたまう政治家も多いですし。本論説では「このメモを見る限り、米軍側はローリング・ストーンズ誌が実際に報じた記事の内容を事前にまったく想定できなかったと思われる」とありますが、ジャーナリズムの常識から言えば当たり前です。日本のメディアは記事の原稿を取材相手に事前に見せることがあるようで、私は驚いたことがありますが、私の所属していた報道機関ではあり得ないことでした。(2010/06/30)

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「極めて異例  クビになった「暴走司令官」」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ローリング・ストーンズ誌の問題の記事を読み、"Almost Famous" (邦題は「あの頃ペニーレインと」)という映画を思い出しました。まさに同誌の記者が1970年代にロックバンドのツアーに同行取材し、本件に似た葛藤に見舞われる話です。さて、オフレコと言われたことを書くのはルール違反ですが、本件はもっと複雑な状況であるように見えます。上記の映画でも、バンドのメンバーたちは、何を書くかわからない記者に対して警戒し敵意を持ちつつも接近し、dirty little secretsを見せてしまい、これが後に大問題に発展します。本件では、明示的にオフレコではなかったということならば同様な状況のように見えます。オフレコでない発言については、録音してあれば正確性やout of context な引用でないことを担保できますから、むしろ、あらためて発言者に確認すれば撤回される可能性が高いコメントを「いいですか?」などと聞くことの方が問題だとも言えます。事前検閲を認めることになるからです。公の場での失言ですら「誤った形で伝えられ遺憾だ」などとのたまう政治家も多いですし。本論説では「このメモを見る限り、米軍側はローリング・ストーンズ誌が実際に報じた記事の内容を事前にまったく想定できなかったと思われる」とありますが、ジャーナリズムの常識から言えば当たり前です。日本のメディアは記事の原稿を取材相手に事前に見せることがあるようで、私は驚いたことがありますが、私の所属していた報道機関ではあり得ないことでした。(2010/06/30)

メディアがスクープ、すなわちターゲットの挙げ足をとろうと必死になるのは日本に限らない様ですね(むしろ競争社会アメリカの方がネタ獲得に必死で酷いかも…?)。しかしマクリスタル氏及び周辺の私的な言動とはいえ、自由の国で自由なものを言うのが許されないというのは寂しい限りです。(2010/06/30)

プライベートな発言ではあってもデッチアゲではないようなので、アメリカ軍の実戦部隊の司令部が最高司令官でありアメリカ市民の代表である大統領に敬意を欠いていたわけで、取材ルールを順守してたらまず表に出てこなかったでしょう。取材ルールを順守するだけのジャーナリズムなら政府広報だけあれば他は不要なのでは?(2010/06/30)

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