世界4位の自動車メーカー連合、ルノー・日産自動車グループが、韓国で新たな企業買収に乗り出した。対象は経営破たんした韓国5位のメーカー双竜自動車(サンヨン、年産24万)だ。ルノー傘下のルノーサムスン(出資比率:ルノー70.1%、サムスン19.9%、ウリ銀行など10%)と日本の日産が共同で、買収意向書を提出した。
この買収には、6社が入札しており、8月に優先交渉対象者が選ばれる予定だ。カルロス・ゴーン氏は、先日開催された日産の株主総会で「韓国で生産能力拡大が必要だ」と述べた。買収目的は、まずはルノーサムスンの生産不足への対応である。輸出向け・内需ともに好調で、今年5万台、2011年には10万台以上が不足するという見方が出ている。
だが、それならば日産が出資する意味は薄い。2つ目としては、双竜自動車の平沢(ピョンテク、京畿道南西部)工場が視野に入っているのではないだろうか。この工場は、西側が黄海に面した新興の港湾都市にある。中国向けの生産拠点や現地組立輸出(CKD)の拠点としての利用価値は大きい。平沢市は、中国、韓国、日本などに囲まれた環渤海経済圏の中央に位置する。上海、北京などの巨大消費地に対して地の利は大きい。
自動車と半導体産業などを中心に急拡大する環渤海経済圏は、人口4億人を有する巨大な消費マーケットになりつつある。平沢市はその要となりうる高いポテンシャルをもっている。さらに、日産の北九州工場との連携も期待できるはずだ。直接ゴーン社長本人に確認したわけではないが、韓国側ではこうした報道が続いている。もし、平沢市に目をつけたのであれば、ゴーン社長の先を見通す力と地政学的知識は素晴らしいと言える。
3つ目は、双竜の中国でのネットワークの活用だ。双竜は2005年に中国の上海汽車に買収され経営再建の途上にあったため、中国からの部品供給網や人的ネットワークを培っているとみられる。
ただし、主力の北米向けSUV輸出の急激な縮小から経営が再び悪化し、2009年には上海汽車が双竜の経営から手をひいている。そこで、生きるのはルノーサムスンで培った韓国企業を運営するノウハウを双竜自動車の再建に生かすことだ。2000年に旧サムスン自動車を買収したとき、この会社は業績不振にあえいでいた。日産から技術支援を受けて、モデルにした日産セフィーロの性能とデザインを上回るでき栄えの「ルノーサムスンSM5(セダン)」(第1回韓国カーオブザイヤー大賞受賞)を発売したものの、研究開発費が膨らみ過ぎてしまった。その上、政府からの要請がありこの新車の販売価格を安く抑えざるを得なくなり、利益が生み出せなかったことなどで経営が傾いた。
ルノー傘下で息を吹き返した旧サムスン自動車
しかしルノーが買収してからは、ルノーサムスンで製造した車種を日産およびルノーブランドにリバッジ(車名やブランド名のバッジを変えて販売する手法)して輸出を拡大し、見事に息を吹き返した。
考えてみれば、ルノーは1999年に日産を救済した際も、日本の企業文化を維持しつつも、旧来の古いしがらみを断ち切ることなどで、V字回復に結び付けている。中国では、ルノー日産は東風汽車との連携を深めており、現地開発車などのヒットで大きく販売台数を伸ばしている。日中韓のそれぞれで、現地メーカーと巧みに連携している企業は他にはない。
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多摩大学 経営情報学部 教授







