日本企業のマーケティングとサムスンのそれとはどこが違うのか――。サムスンの内部事情にも詳しいコンサルティング会社コムセルの飯塚幹雄社長に聞いた。
「日本企業では広告宣伝の延長ととらえられがちだが、サムスンでは商品を作る段階から売り方に至るまでがマーケティングの範疇になっている」と話す飯塚社長は、マーケティング部門が販売実績に対して責任を負わない体制が、日本メーカーの弱さだと言う。
(聞き手は吉野次郎=日経ビジネス記者)
―― サムスン電子の海外マーケティングをコンサルタントとして支援してきました。サムスンはどのような会社ですか。
マーケティングのコンサルテーションを手がける「コムセル」を1980年に設立し、社長を務める。電機製品、飲料、食品、自動車、ファッションなどの幅広い分野のマーケティング業務に従事する。
飯塚 サムスン電子はマーケティングの会社だと言っていいでしょう。マーケティング業務が中心の社内体制を築いています。
日本の電機業界の間で、一般的に考えられているマーケティングとは概念が違います。
日本では、広告宣伝の延長ととらえられがちです。広告のデザインを考えたり、CMの撮影現場に立ち会ったり、コピーを考えたりするのがマーケティングの仕事になっています。ところがサムスン電子は、商品を作る段階から売り方に至るまで、マーケティングの範疇になります。
携帯電話が市場開拓の先兵
売り方について言えば、例えばある商品をフランスで発売したら、次に同じフランス語圏のアフリカ諸国で同じ商品を売りやすくなりますし、ドイツで発売したら地理的に近い旧東欧地域で売りやすくなります。イタリアなら、次は地中海沿岸国の市場で販売しやすくなるといった具合です。
日本のメーカーで、そこまで綿密な発売計画を立てて製品を投入しているところは少ないでしょう。とにかくできるだけ多くの国で商品を発売すればよいと、単純に考えているところ多いように思います。
またサムスンの場合、製品別に市場開拓の役割を明確にしています。最初に市場を切り開く先兵となるのが携帯電話です。毎日持ち歩いていれば、嫌でもサムスンのロゴが目に入ってきます。ブランド名が浸透するとともに、サムスン製品の品質の良さを知ってもらえます。これが、例えばサムスンの液晶テレビを買うきっかけになります。
購入した液晶テレビを居間に設置したら、訪問者の目にもサムスン製品が触れて、サムスンの認知度が高まります。そして冷蔵庫や洗濯機など、次々に製品が売れていきます。商品が次の商品を呼ぶ形で市場を開拓するのが、サムスンのマーケティング手法です。
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