厳しい社内競争で社員を鍛え上げるのが、サムスン電子流の人材育成法だ。そんなサムスンで積んだ経験を生かして転職したり、起業したりする社員は少なくない。
パク・ジョンヨン氏(仮名)もそんな1人。数年にわたりマーケティング業務などに携わった後、外資系会社などを渡り歩き、コンサルタントとして独立した。そんなパク氏に、古巣への思いを聞いた。
(聞き手は吉野次郎=日経ビジネス記者)
―― サムスン電子はどのような会社でしたか。
パク 社員同士を競わせる文化があります。社員たちは厳しい目で評価され、同期入社であっても、成果によって年収に大きな差がつきます。
実績を上げた社員に会社は、高い報酬とポストで厚遇します。役員に上り詰めれば、億円単位の年俸も夢ではありません。皆が憧れる「スター選手」を作り上げることで、ほかの社員のやる気を引き出しています。
日本企業の社員は報われない
日本企業では個人よりも組織の力を重視するのが一般的です。個人に卓越した能力があっても、待遇面で特別扱いすることはあまりありません。せっかく画期的な発明で会社に莫大な利益をもたらしたのに、報酬に反映されず、訴訟に発展するケースすらあります。
日本企業は、頑張って成果を上げた人を、もっと報いてもいいのではないでしょうか。
―― 特定の個人ばかりを優遇すると、チームワークが乱れませんか。
人事評価制度をうまく運用すれば、組織の調和が乱れることもありません。サムスン電子では、業績アップに貢献した個人をスター選手として厚遇するだけではなく、同じチームで一緒に働いたメンバーの給料も連動する形で引き上げます。事業部全体の業績が上がれば、事業部全員の給料も上がる仕組みになっています。
つまり、個人とチーム、事業部のバランスをうまくとることで、組織の調和を保っているのです。
―― 成果を出すことができないと、どうなるのでしょう。
成果の出ない社員に厳しく対応します。仮に、同じ失敗を3回繰り返せば、仕事を与えられなくなります。出社してもすることがなく、会社を辞める社員は少なくありません。早期退職制度なども実施しており、定期的に人員を整理しています。
再就職先は引く手あまた
かつては、サムスン電子は終身雇用制度を取っており、会社が社員の雇用を守ってきました。しかし、1997年に韓国経済を襲った「アジア通貨危機」の際に、大幅なリストラを実施しました。これをきっかけに、リストラが当たり前の会社になりました。
もっとも、サムスン出身者の再就職は、韓国ではそれほど難しくありません。厳しい社内競争で鍛えられた人だと認識され、一目置かれます。海外でもサムスン社員に対する評価は高く、新しい働き口を見つけるのはそう難しくないようです。
―― サムスン電子の好業績が続いていますが、経営は磐石と言っていいのでしょうか。
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