「サムスン 最強の秘密」

「スター選手」は組織調和を乱さない

業績アップ、個人だけでなくメンバー全員に報いる

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2010年7月28日(水)

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 厳しい社内競争で社員を鍛え上げるのが、サムスン電子流の人材育成法だ。そんなサムスンで積んだ経験を生かして転職したり、起業したりする社員は少なくない。

 パク・ジョンヨン氏(仮名)もそんな1人。数年にわたりマーケティング業務などに携わった後、外資系会社などを渡り歩き、コンサルタントとして独立した。そんなパク氏に、古巣への思いを聞いた。

(聞き手は吉野次郎=日経ビジネス記者)

 ―― サムスン電子はどのような会社でしたか。

 パク 社員同士を競わせる文化があります。社員たちは厳しい目で評価され、同期入社であっても、成果によって年収に大きな差がつきます。

 実績を上げた社員に会社は、高い報酬とポストで厚遇します。役員に上り詰めれば、億円単位の年俸も夢ではありません。皆が憧れる「スター選手」を作り上げることで、ほかの社員のやる気を引き出しています。

日本企業の社員は報われない

 日本企業では個人よりも組織の力を重視するのが一般的です。個人に卓越した能力があっても、待遇面で特別扱いすることはあまりありません。せっかく画期的な発明で会社に莫大な利益をもたらしたのに、報酬に反映されず、訴訟に発展するケースすらあります。

 日本企業は、頑張って成果を上げた人を、もっと報いてもいいのではないでしょうか。

 ―― 特定の個人ばかりを優遇すると、チームワークが乱れませんか。

 人事評価制度をうまく運用すれば、組織の調和が乱れることもありません。サムスン電子では、業績アップに貢献した個人をスター選手として厚遇するだけではなく、同じチームで一緒に働いたメンバーの給料も連動する形で引き上げます。事業部全体の業績が上がれば、事業部全員の給料も上がる仕組みになっています。

 つまり、個人とチーム、事業部のバランスをうまくとることで、組織の調和を保っているのです。

 ―― 成果を出すことができないと、どうなるのでしょう。

 成果の出ない社員に厳しく対応します。仮に、同じ失敗を3回繰り返せば、仕事を与えられなくなります。出社してもすることがなく、会社を辞める社員は少なくありません。早期退職制度なども実施しており、定期的に人員を整理しています。

再就職先は引く手あまた

 かつては、サムスン電子は終身雇用制度を取っており、会社が社員の雇用を守ってきました。しかし、1997年に韓国経済を襲った「アジア通貨危機」の際に、大幅なリストラを実施しました。これをきっかけに、リストラが当たり前の会社になりました。

 もっとも、サムスン出身者の再就職は、韓国ではそれほど難しくありません。厳しい社内競争で鍛えられた人だと認識され、一目置かれます。海外でもサムスン社員に対する評価は高く、新しい働き口を見つけるのはそう難しくないようです。

 ―― サムスン電子の好業績が続いていますが、経営は磐石と言っていいのでしょうか。

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著者プロフィール

吉野 次郎(よしの・じろう)

日経ビジネス記者。1期生として慶応義塾大学環境情報学部を卒業。1996年に日経BPに入社し、通信業界の専門誌「日経コミュニケーション」で2001年までNTTと新電電の競争や業界再編成を取材。2007年まで通信と放送の専門誌「日経ニューメディア」で、通信と放送の融合やデジタル化をテーマに放送業界を取材。現在は「日経ビジネス」で電機やIT(情報技術)業界をカバーする。好きな季節は真夏。暑ければ暑いほどよい。お腹の出っ張りが気になる年齢にさしかかり、ダイエット中。間もなく大型バイク免許を取得する予定。著書に『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』(日経BP)。



このコラムについて

サムスン 最強の秘密

日本の電機大手をシェアと収益力で圧倒する韓国サムスン電子。強みは「逆張り投資」「マーケティング」「オーナー経営」とされる。しかし、後発で参入しても勝ち続けられる原動力はほかにもある。情熱を持ち、不可能はないと信じ、必死で戦略を実行する社員だ。かつて日本が得意とした「理念を叩き込む経営」をサムスンは重視する。社員が持つ能力を徹底的に引き出して、活用する仕組みを解剖する。

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