「日本と韓国の交差点」

朝鮮半島の統一はありえるのか?

韓国が抱える統一の障害は「情報」(2)

バックナンバー

2010年9月1日(水)

1/2ページ

印刷ページ

第1回から続く

 韓国内では北朝鮮の情報が錯綜している。このため、韓国人が肌で感じる北朝鮮は宇宙のように遠くなるしかない。

 韓国銀行によると、北朝鮮と韓国の国民所得の格差は18倍、経済規模の差は38倍もあるという。(驚いたことに、1960年代まで、北朝鮮の方が韓国より経済的に発展していたという)しかし数字だけでは北朝鮮がどのような状態にあるのか、よく分からない。

北朝鮮がどういう状態にあるのか、韓国は分っているのだろうか

 北朝鮮に関するニュースを読んでも聞いても、やっぱりよく分からない。韓国のマスコミは、ある日は「北朝鮮は政権崩壊直前。飢餓で死者が続出した」といい、また、ある日は「闇市は活気があふれ、経済が活性化している」という。「韓国の大衆文化が北朝鮮にも伝わり歌謡曲がよく歌われるようになった」。「韓国のドラマをDVDで見ている」。「幹部奥さんの間では韓国産シャンプーを使わないと仲間外れになる」などなど。ニュースがないわけではないが、やっぱりよく分からない。IT強国の韓国であるが、北朝鮮関連サイトはアクセス禁止になっていて韓国政府が監視している。気にはなるが見ようとは思わない。スパイと勘違いされては大変だからだ。

 韓国政府の行動や発表も一貫してはいない。政府はかつて太陽政策を取り、北朝鮮を援助していた。しかし、李明博大統領に変わるプチッと中断した。「北朝鮮への援助物資が北朝鮮軍に流れている」というのが理由だった。哨戒船が沈没し多くの犠牲者が出た事件でも、「北朝鮮の仕業」と言ったり違うと言ったり、よく分からない状況が続いている。

 今までも、北朝鮮の仕業として知られていた事件が、実は違っていたことがいくつかあった。映画化された「シルミド」もその一例だ。韓国政府は、数人の人たちを書類上は死んだものとし、北朝鮮に送り込むために訓練していた。その彼らが反発。しかし軍は、彼らが、訓練地の島を脱出してバスを乗っ取りソウルへ向う中に射殺した。この事件も、韓国政府は長い間北朝鮮の仕業としていた。

 私が小学生のころに見た韓国の本に登場する北朝鮮は許されない敵であり倒すべき敵と書いてあったほどだ。中には軍服を着た狼の挿絵が描かれており、とても恐ろしかった。

 北朝鮮にどんな人が住んでいてどんな状態なのか、韓国人は日本の報道や衛星写真などを見てパズルを合わせるように想像するしかないのだ。だから怖い。南だけでも所得の格差による問題が絶えない。「働いても働いても貧乏を抜け出せない」と悲観して20代の女性が自殺した事件が起きたばかりである。北朝鮮から南へ流れてくる人々をどう助けたらいいのか。その費用は税金だけでまかなえるのか。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント9 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内