Peter Burrows(Bloomberg Businessweekシニアライター、サンフランシスコ)
米国時間2010年9月1日更新「Don't Rule Out Apple Ruling Your Living Room」
米電子機器大手アップル(AAPL)はここ10年あまり成長を上げてきた。同社の好業績をけん引したのは、携帯メディアプレーヤー「iPod」やスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone」、タブレット機「iPad」のヒットだ。そんなアップルにも、鳴かず飛ばずの商品が一つだけある。2006年に発売した「Apple TV」だ。
Apple TVは、「Macintosh」などのパソコンに接続するセットトップボックス。コンテンツ配信サービス「iTunes」からデジタルコンテンツをダウンロードし、テレビで動画などを視聴できるようにする。米証券会社カウフマン・ブラザーズのアナリスト、ショー・ウー氏の推計によると、Apple TVのこれまでの販売台数は300万台に満たない。これに対し、iPadはわずか3カ月で300万台以上を売り上げている。
これまで売れ行きが芳しくなかったにもかかわらず、スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、9月1日に米サンフランシスコで開催したイベントで、従来と代わり映えのしない新型Apple TVを発表した。新モデルは、従来型と外見は異なる。色は白から黒に変わった。サイズも3.9インチ(約10センチメートル)四方と従来の4分の1になった。また、映画やテレビ番組のコンテンツは購入しなくてもレンタルで視聴できる。本体価格も229ドル(約1万9300円)から99ドル(約8300円)に値下げした。だが、機能的にはほとんど変わらない。米インタラクティブ・マーケティングコンサルティング会社BGTパートナーズのデービッド・クラーク氏は「依然として“アップル信者”向けの製品であることに変わりはない」と評価する。
アップルがAppleTVを捨てない理由
では、アップルがわざわざApple TVを取り上げる意味は何か。ジョブズCEOですら、Apple TVは主にデジタル機器愛好者向けの製品だと認めている。9月1日のイベントでアップルは、iPodの新ラインアップや、iTunesで利用可能になSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)機能の発表に重点を置いた。
ジョブズCEOがこのイベントで語らなかったのは、アップルが「リビングルームの支配者の座を狙っている」ことだ。ジョブズCEOは、環境が整えば、オンライン配信サービス「App Store」をテレビ向けに開設する可能性があるとBloomberg Businessweekに語っている。iPhone向けと同様、テレビ向けにアプリを提供するためだ。「iPadが未来のテレビとなる可能性があるか」との問いに対しては、同CEOは肩をすくめて「いま私は、たいていiPadでテレビを見ている」と語った。
障害として立ちはだかるコンテンツ配信権の問題
とはいえ、「テレビ向けコンテンツ配信の環境が整うのはまだ先の話だ」とジョブズCEOは言う。その最大の障壁は、配信したいコンテンツの販売権をアップルが保有していないことだと考えられる。昨年末、アップルは映画・テレビ番組制作会社に新しい動画配信サービスへの協力を持ちかけた。この交渉に関わった3人のメディア幹部によれば、多くの映画・テレビ番組制作会社は、アップルの提案を拒否したという(この3人の幹部は交渉内容を公表する許可を得ていないとして、匿名を条件に語った)。コンテンツに数千億円の放映権料を支払っているケーブルテレビ(CATV)会社の怒りを買うことを恐れたからだ。アップルの構想通りに進めば、視聴者は、見もしない数百ものチャンネルの視聴料金を払う代わりに、見たい番組だけを単品で購入できるようになるはずだ。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




Bloomberg Businessweekは米ブルームバーグ社が発行するビジネス雑誌である。1929年、大恐慌の年に創刊されて以来、世界中に読者を拡大してきた。現在の読者数は約470万人を誇る。本コラムではBloomberg Businessweek誌および





