「日本と韓国の交差点」

兵役は本当に義務なのか?

徴兵回避で揺れる韓国

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2010年9月22日(水)

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 韓国で有名なジョークの一つにこういうのがある。韓国女性が男性から最も聞きたくない話のネタ1位は軍隊の話、2位はサッカーの話、3位は軍隊でサッカーした話。

 韓国男性は軍の話になると、どんな寡黙な人でも興奮する傾向がある。英雄談に、自慢話に、苦労話に。延々としゃべりたがる。

 サッカーも同じ。軍隊でサッカーした話はもっとうんざりする。女性は「戦闘体育」がどうのこうのよりも、共通の話題で盛り上がりたいと思うからだ。でもやっぱり止められないみたい。60代の父だって、学生将校で同じ部隊に居た友達と、いまだに最も仲良くしているし、当時の話で盛り上がる。

 韓国の国籍を持つ男性は国防の義務があり、2年ほど軍に行かなければならない。兵役法の規定により、韓国の男性は19歳になると徴兵検査(身体検査)を受け、その結果に応じて入隊することになっている。

 服務期間は入隊した時期によって違う。2007年の兵役法改定により、2014年までに陸軍24カ月→18カ月、海軍26カ月→20カ月、空軍27カ月→21カ月と段階的に服務期間を短縮していく。ところが少子化で徴兵の対象となる男子の数が減っている。そのいっぽうで、北朝鮮は約117万人の兵士を維持している。韓国軍の人数が50万人にも満たなくなるという懸念から、徴兵期間をまた24カ月に戻す議論が始まっている。

 兵役は、大きく分けると2種類ある。陸軍の私兵(将校でない兵士。二等兵から兵長までを指す)となって入営する「現役」と、自宅から通い区役所や市役所など政府機関の業務補助をする「公益勤務」だ。徴兵の代わりにIT企業に勤める産業機能要員という制度もあったが、あまりにも弊害が多かったため2012年には廃止される。例えば、知り合いの会社に登録して出勤もしていないのに勤務したことにする、社長同士で自分の息子をお互いの会社に産業機能要員として登録させる、といったことがあった。

 医者、弁護士などの専門職も徴兵の例外ではない。軍医や公衆保険医、裁判所など専門的な仕事を任される。大学生の場合、成績優秀者のうち選抜試験を通過した学生は、将校で入隊できる制度がある。海軍と空軍は、自分から進んで入隊を申し込む「自願入隊」なので陸軍より選抜基準が厳しく、入るのが難しい。

 もちろん、女性も軍に入れる。女性の場合は徴兵ではなく志願入隊となる。それも、私兵ではなく幹部候補として入隊する。徴兵ではないので、女軍が入隊するためのハードルは高い。しかしエリート集団として、社会や軍が注目している。つい最近、女子大生向けにもROTC(Reserve Officers' Training Corps)が新設され、全国各地の女子大から応募が殺到した。ROTCは、大学に通いながら軍事訓練を受け、卒業後は将校として入隊する仕組みだ。

兵役で細マッチョを実現

 徴兵検査の結果、右手の人差し指がなくて銃が撃てない、心臓が悪くて歩けない、精神異常、視力が悪すぎる、高度肥満で動けない…などの理由で免除される人がいる。

 知人の中に、この制度を“悪用”しようとした人が居る。もともとデブだったのを、さらに高度肥満にして入隊を免れようとした。だが、体重を増やすのに失敗。中途半端な体重にしかならなかったため、けっきょく入隊することになった。ただし、彼は軍のダイエット部隊に連れて行かれて、肉体改造に成功! みごとな細マッチョになって帰ってきた。

 性格も丸くなって、「人が変わった!」と両親も大喜びだった。軍に入るまで、彼の友達は、同じ学校、同じ地域、同じような家庭環境の人ばかりだった。だが、軍の友達は出身地も職業もばらばら。一緒に苦労した者同士だから、自然と友情が深まった。除隊後は人脈が広がって、社会生活の強い味方になっているという。

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著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

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