「日本と韓国の交差点」

徴兵は、韓国男性アイドルの芸能人生命を左右する

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2010年9月29日(水)

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 「イジェナルババミスター イルミモヤミスター、ジージージージーベイベーベイベーベイベー」。しまった、また口ずさんでしまった。テレビでもネットでも街中でも、洗脳されるほど聞いてしまったせいだろうか。この歳になってもアイドルの歌がすんなり歌えてしまう。

 60万人に及ぶ韓国国軍の希望とロマンと呼ばれる女神さま、「少女時代」がついに日本にやってきた。彼女たちだけではない。「カーラ」や「ブラウンアイドガールズ」、「フォーミニッツ」など、韓国で大人気の女性アイドルグループが次々日本デビューを果たしている。

 韓国のメディアも、「女性アイドルたちが日本を魅了した」と連日報道している。「ライブに2万人が集まった」。「海外アーティストのアルバム売上順位で記録を更新した」。「バラエティー番組に出演したこんな発言をした」。などなど、日本におけるすべての活動が報道されていると感じられるほどだ。「本当に人気がある」ことの証拠として、レコード店の陳列やライブ会場の写真がネットに投稿されている。日本に住んでいる韓国人が中心となって投稿しているようだ。

軍での慰問公演の数は人気のバロメータ

 韓国のアイドルの人気順位は、アルバムや曲がダウンロード販売された数の順位だけでなく、軍の慰問公演にどれぐらい呼ばれるかも重要な要素だ。慰問公演の回数が多いほど、国民的人気を誇るアイドルであると言える。人気が高いのはやはりセクシーな踊りを売りにする女性歌手。ここ最近は「少女時代」が人気ナンバーワンなのだそう。韓国軍の最終兵器は軍人の士気を最高潮にしてくれる「少女時代」ではないかと思ってしまうほどすごい。ネットに投稿された慰問公演の動画を見ていると、少女時代の歌声が「うお〜」という軍人たちの歓声にかき消されて全く聞こえない!

 国軍放送の広報大使にも、男性芸能人ではなく女性アイドルグループ「Fx」が選ばれた。「少女時代」の妹分として結成されたグループだ。1年間、国軍放送への出演、キャンペーン、慰問公演をする。男性アイドルは徴兵で軍とかかわるいっぽう、女性アイドルもこうした形で軍と密接な関係にある。

男性アイドルにとって徴兵は「アイドルの終わり」を意味する

 最近の若手スターの中には、「徴兵のことであれこれ言われたくない」と、厳しい海軍や空軍にわざと志願する人もいる。本人は苦労するし、除隊後も人気が続くかどうか不安はあるだろう。だが、株は上がる。自分の子供を軍に行かせたお母さんたちの支持率が高くなれば、視聴率を取れるタレントになれるかもしれない。

 いっぽうで年々増えているのは、不祥事を起こし、「自粛」のために入隊するケースである。麻薬、飲酒運転、傷害事件などの問題を起こし、“みそぎ”のために軍に入る。そして、事件が忘れられたころに除隊して芸能界に復帰する。

 「芸能人」の場合、入隊してからも「芸能兵士」として芸能活動を続けられる道がある軍の広報映画に出演したり、国軍が放送するFMラジオ番組のパーソナリティを務めたり(国軍放送のラジオは誰でも聞ける)、慰問イベントの司会をしたり。それでも人気が落ちるのを恐れて、法律違反を犯してでも徴兵を免除されたがる。

 男性アイドルの場合、徴兵の通知は「もうアイドルではなくなる」という通知にも等しい。徴兵をきっかけにグループ解散もよくある話しだ。小学校5〜6年生のときにオーディションで選ばれ、練習生として5〜6年ほど苦労してやっとデビュー……と思ったら、3〜4年たった全盛期に徴兵の通知が届く。除隊後もアイドルで居られる保障はない。

 最近は「軍必ドル(徴兵を済ませたアイドル)」といって、除隊してからデビューする実力派もいるが、美少年というよりお笑い系アイドルとして人気を得ている。

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著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

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