「蟹斗」
経済観察報記者 王芳 余普 閻薇
9月16日、秋の風物詩である上海蟹*の水揚げが今年も解禁された。北京の大手国有企業に勤める楊さんの一家は、毎年このシーズンを楽しみにしている。しかし今年は、上海蟹にありつけないのではないかと心中穏やかではない。
*チュウゴクモズクガニの日本での通称。中国では「大閘蟹(ダーチャーシエ)」と呼ばれ、毎年10〜11月がシーズン。江蘇省蘇州市にある陽澄湖産のものが最高級とされている。
昨年までは500元(約6200円)も出せば、一家で食べるのに十分な数の蟹が買えた。ところが今年は、陽澄湖産上海蟹の価格が解禁日から急騰。わずか3日で過去10年来の最高値をつけたのだ。
商品券があっても「品切れ」
幸運なことに、楊さんの手元には取引先からもらった陽澄湖産上海蟹の商品券があった。一家はこれで今年も上海蟹が食べられると喜んだが、それもつかの間だった。ここ数日、楊さんは北京市内の複数の専売店に何度も電話しているが、どの店も「品切れ」と言うばかりで全く手に入らない。
楊さん以上にあわてているのは、実は上海蟹の販売業者たちだ。北京市東城区にある陽澄湖産上海蟹の専売店を訪ねると、店内には空っぽの水槽が並んでいた。「今日は1000斤(約500kg)の蟹が入荷したが、夕方までに全部売り切れた」と店主は話す。
この店主は陽澄湖畔の農村の住民で、毎年9〜10月に北京にやってきて上海蟹を売りさばく。この日はオス5匹とメス5匹のセットを880元(約1万1000円)で販売したが、「明日の値段をいくらにしたらいいか、自分でも見当がつかない」と頭を振る。
例年より売価が大幅に上がっているのに、彼の表情は冴えない。「仕入値が去年より25%も上がり、利益はむしろ減っている」というのだ。
上海蟹は2〜3年前まで供給過剰で、販売業者は過当競争に陥っていた。そんな中で広まったのが、業者の間で“上海蟹の先物”と呼ばれる商品券である。シーズンが始まる前に商品券を割引価格で販売し、後からもっと安く蟹を仕入れて利ざやを抜く。今ではほとんどの業者が商品券を販売している。
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