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造船三国志の行方を左右する「諸葛孔明」

川崎重工業の造船部門トップ、神林伸光常務にインタビュー

  • 佐藤 紀泰

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2010年11月15日(月)

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 韓国、日本、中国が激しく覇権を争う「造船三国志」。その勝負の行方を占う日本人がいるとすれば、この人物だろう。川崎重工業の造船部門トップである神林伸光常務(船舶海洋カンパニープレジデント)がその人だ。

 三国志の登場人物に例えるとすれば、蜀を繁栄に導いた天才軍氏、諸葛孔明だろう。それぐらい、神林氏がかつて首脳陣を説得して始め、成功に導いた日中合弁の大型造船所は歴史的な意味がある。今年夏に本格稼働した遼寧省大連市郊外にある第二造船所はそれこそ、世界最強の韓国の造船業界に挑む戦略拠点である。

 日本の造船業界では大手の多くが造船拠点の統廃合など縮小均衡に陥っており、未来が見えない状況だ。それに対して、川崎重工は中国との提携を軸に再び世界トップを狙う。それが可能なのは人材育成に力を入れ、それが成功していることが大きい。

 今回は10月11日から3日間、中国の合弁造船所を訪問した神林常務に同行し、密着取材した。まず、神林常務のインタビューから始めたい。

(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)

―― 今回は大型鉄鉱石運搬船(VLOC)の命名式のために、中国遠洋運輸集団(COSCO)との合弁会社である南通中遠川崎船舶工程(NACKS)を訪問されました。日本でも建造されていないVLOCを中国で建造し、しかも船主は日本企業です。NACKSの生産や品質のレベルが急速に上がってきていますね。

川崎重工業の中国との合弁会社で10月13日に開かれた大型鉄鉱石運搬船の命名式イベント。女性たちが踊り、雰囲気を盛り上げる(江蘇省南通市、写真:町川秀人、以下同)

神林 現在は、中国人が中国人を育てることができています。日本人も定期的に来ていますが、駐在者はほとんどいない。

 川崎重工が1995年12月にCOSCOと合弁契約を結んでから、最も力を入れたのは現地の人材の育成です。私はすぐに、こっちに来て、中国人の採用を始めました。当時採用した若手が今では合弁会社の柱になっています。最初は30人を採用しました。これは「花の一期生」と呼ばれています。ほとんど辞めていません。

 最初は本当にすごかった。当時、COSCOはこの江蘇省南通市に修繕ヤードがあり、それで給料が高いと言われていた。それで採用が始まると、数千人が殺到しました。本人だけでなく、両親がやってきて、子供の表彰状とかまで持ってきて、「うちの子供は優秀なのだから、採用してくれ」ですよ。採用の面接をしている建物の窓ガラスが割れたほどです。

―― 2008年に造船バブルが崩壊しました。受注環境は厳しいですが、NACKSの稼働状況は今後、どのようになるのでしょうか。

NACKSを視察した川崎重工業の神林伸光常務

神林 2013年まではドックが埋まっています。その中には合弁相手であるCOSCO向けの大型コンテナ船があります。これは積載するコンテナ数が1万3000個という巨大な船であり、日本でやったこともありません。非常に付加価値が高い船です。

 設計は日本の川崎重工業の技術者が中心になります。建造についてはこちらの中国人のリーダーがその中核を担います。1万3000個という大型コンテナ船は日本の造船業界でも作れるところは極めて少ないでしょう。NACKSは本当に力をつけてきているのです。

 もちろん、NACKSでも要となる部分では日本からの派遣技術者がいます。顧客からも川崎重工がしっかり保証することを求められていますから。ただ、中国の若い技術者たちは非常に向上心が強い。将来が楽しみです。

ついに切り札のLNG船も建造へ

―― それにしても、NACKSにしても、育ててきた中国人はほとんどやめていませんよね。

神林 それは合弁相手のCOSCOから派遣された人事部門の人もしっかりしています。優秀な人材を選抜して、しっかり育てるという制度があります。もちろん、私たちが考えているのは若い中国人の技術者たちと将来の夢を共有することです。未来像を見せないと。ここで働くことで、一緒に世界市場で成功できる。

 もちろん、給料などの処遇も充実させています。今、NACKSでは正社員が2000人以上います。車で通勤している社員は500人ぐらいいます。もう、駐車場の確保で大変です。この造船所ではやりがいも大きい。大型鉄鉱石運搬船であるVLOCのほか、先ほどお話した1万3000個のコンテナ船など、中国で初めてと言える難しい船をどんどん作っている。それだけに、魅力的な職場です。

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