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なぜ北朝鮮は危機を煽り続けるのか?

2010年11月29日(月)

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北朝鮮の行動の動機:国内的要因と対外的要因

 11月23日に、北朝鮮が韓国西方沖の延坪島に砲撃を行い、韓国軍兵士2名、民間人2名の死者を含む大きな被害を出した事件で、韓国政府は防衛体制の強化に動き、アメリカと米韓合同軍事演習を実施することで合意。朝鮮半島の緊張が高まっている。

 北朝鮮が韓国領の陸地に対する攻撃を実施したのは、1953年に朝鮮戦争休戦協定が締結されてから初めてのことであり、なぜ北朝鮮がこのような行動に出たのかについてさまざまな憶測が飛び交っている。

 過去数週間、「北朝鮮が核実験の準備をしている」兆候のあることが広く報じられたり、また米国の核専門家を北朝鮮に招聘して新たなウラン濃縮施設を見せるといった行動に出るなど、北朝鮮が何か新たに危機感を煽るような行動に出るのではないか、という観測が専門家の間から出ていたが、北朝鮮がこの日に延坪島に攻撃を行い、しかも民間人に死傷者を出すような行為に出ることを事前に予測できた人はおそらく皆無であろう。これは北朝鮮という国家の内部で何が起きているのか、そしてこの国の政策がどのような意図に基づいてなされているのかについて、「正確なことはわからない」と言うことを意味している。

今回の行動の意図はどこに

 最近ロバート・ゲーツ米国防長官が、北朝鮮に関する記者会見で、記者団に対して「『なぜ』ではじまる質問にはすべて答えは『I don’t know(わからない)』だ」と述べていたが、このゲーツ長官のコメントは元CIA分析官らしい正確な答えと言えるだろう。

 北朝鮮分析にはこのような制約があるということを前提にしながらも、さまざまな状況証拠や過去の経緯などから、現在およそ次のような「意図」が今回のような行動の背景にあるのではないかと考えられている。

 1つは国内的な要因で、「金正恩後継体制の業績作り」という見方である。韓国と限定的な軍事衝突を起こすことで、北朝鮮内部で「敵に対する偉大な英雄的勝利」を宣伝し、新たな金正恩体制を強化するというものだ(11月24日付産経新聞)。

 もう1つは対外的な要因であり、「米国を交渉に引きずり込むために危機を煽る」とする見方だ。北朝鮮は、「南北軍事境界線周辺でこのような事件が起きるのは、朝鮮戦争の停戦協定が機能していないからだ。

 朝鮮半島における緊張をとるために米朝平和協定の締結が必要だ」というロジックで、米国を交渉に引き込もうとしているという解釈である。今年の8月に、拘束されていた米国人の釈放のために訪朝したカーター元大統領は、11月24日に『ワシントン・ポスト』紙に寄稿し、「北朝鮮は核放棄と引き換えに米国と永久的な平和条約を結ぶ用意がある」ことを同大統領に伝えたことを明らかにしている。

 北朝鮮の行動の動機には、大きく分けるとこのような国内的要因と対外的要因の2つがあると考えられている。

北朝鮮を止められない国際的なメカニズム

 しかし、多くの読者は不思議に思うだろう。米国と交渉をしたいのであれば、米国が望むように態度を改めればよいではないか。なぜ米国が嫌がることをわざわざするのだろうか、と。北朝鮮に限らず、米国と敵対している国は、「米国と交渉したい」と言いながら、その一方で、米国が嫌がることをするのが普通である。外交の専門家はよくこうした行動のことを「交渉力を高めようとしている」と説明するが、これはどういうことを意味しているのだろうか。

 簡単に言えば、北朝鮮が米国の嫌がることをする理由は、彼ら(北朝鮮)が米国に対して「止めて欲しい」と思っていることがあるからである。「経済制裁をやめて欲しい」、「敵視するのをやめて欲しい」…。北朝鮮はいつか米国と直接交渉をしてこうした米国の政策を止めて欲しいと思っているのだろう。だから北朝鮮は「米国が北朝鮮に対して止めて欲しい」と思うことを次から次に作っているのである。核開発、ミサイル輸出、今回のような朝鮮戦争の停戦協定違反、偽ドル札つくり…、米国が「止めてほしい」と考えているリストは長くなる一方だ。この1つひとつの項目は、「外交カード」と呼ばれている。

 北朝鮮が究極的に望んでいるのはおそらく米国と二国間で無条件の交渉を行うことではないかと思われる。「無条件」とは「核問題について」というような条件を一切つけず、持っている外交カードをすべて机の上に並べることのできる交渉のことである。

 米国と北朝鮮が二国間でこのような交渉をしたと仮定しよう。お互いに「止めて欲しい」と思っていることについて交渉をするわけである。よっぽどへぼな交渉者でない限り、主権国家同士が交渉をするのであれば、「うちがこれを止めるのであれば、おたくはそれをやめろ」という相互主義に基づいた取引になるはずである。北朝鮮が「ミサイル輸出」をやめるのであれば、米国は「金融制裁」をやめるという具合だ。

 このような交渉になれば、当然、「外交カード」の多い方が勝つ。つまり北朝鮮の圧勝である。だから米国は決して北朝鮮との二国間の交渉には応じない。多国間の会議で、しかもテーマを「核問題」というように限定した形で交渉をすることを望むのである。

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「なぜ北朝鮮は危機を煽り続けるのか?」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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