「日本と韓国の交差点」

北朝鮮による延坪島砲撃:私が見た仁川の光景

インスタントラーメンや水の価格が急騰

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2010年12月1日(水)

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 頭が真っ白になるとはこういうことだったのか。

 ニュースを聞いた瞬間は何が何だか分からなかった。

 戦争が始まるのか?

 その恐怖だけでニュースに集中することもできないほどだった。

 まさか、北朝鮮が軍事的に攻撃してくるとは想像もしなかった。
 休戦状態ではあるが、韓国人の多くは「同じ民族同士で殺し合う戦争はもうしないだろう」と信じ、ずっと平和ボケしていた。しかし、北朝鮮にとって韓国は同じ民族ではなく、敵でしかなかった。世襲を守るため、体制を守るため、いつでも攻撃できる相手だったのか。「韓国は北朝鮮を攻撃することない。何があっても戦争を避ける」との確信から攻撃を決めたのか。

 北朝鮮の爆弾が韓国の領土内に落ちたのは朝鮮戦争以降これが初めてだという。だが、砲弾は、民家が集まっている住宅街の中に落ちた。畑や海で生業に励んでいた住民は、空から降ってくる砲弾に驚き、逃げ回った。海に落ちたものまで含めると100発以上の砲弾が打ち込まれた。1700人ほどが住んでいた延坪島は足の踏み場もないほど破壊され、山が燃えた。

午後2時34分 ソウル:いつもと変わらないソウルだった

 11月23日午後2時34分、北朝鮮が仁川の延坪島に向けて、海岸砲と曲射砲を1時間17分ほど発射し続けていた間、ソウル市内はいたって平和だった。漢江はいつになく緑色に輝き、遊覧船がゆっくり通り過ぎていった。空は晴れて真っ青、ソウルの北にある山が手に取れるほど近く見えた。

 日本人観光客や中国人観光客を乗せたバスが何台も光化門の免税店前に止まり、ガイドさんたちが一休みしていた。いつもの平穏な一日であった。延坪島はソウルから遠いとはいえ、韓国領土内である。韓国の領土が北朝鮮によって攻撃されているのに、緊迫した様子は全然なかった。

 私がそのニュースを聞いたのはタクシーの中だった。観光客でごった返す明洞の近くで取材を終えてタクシーに乗ると、運転手さんに「戦争が起きるかもしれないよ。早く家に帰ったほうがいい」と言われた。

 タクシーの中で地上波DMB(韓国のワンセグ)のニュースを聞きながら、何をどうしたらいいのか、頭がくらくらして手が震えた。黒い煙しか見えない映像。アナウンサーは「北朝鮮が砲撃してきた。しかし、何がどうなっているのか状況は把握できていない」と繰り返していた。その声を聞きながら窓をのぞくと、ソウル市内は何事もなく、人々の表情にも変化がない。みんなニュースを聞いてないのか?

仁川:インスタントラーメンやミネラルウォーターの価格が急騰

 仕事場のある仁川に着いたら、雰囲気は全然違っていた。ここは延坪島から近い。北朝鮮の海岸砲や曲射砲の射撃距離内に入る地域が多いだけに、不安も身近なものとなる。

 「仁川空港も狙われているのではないか」。
 「日が暮れるとまた攻撃が再開されるらしい」。
 「仁川市民に避難令が出るかもしれない。どこに行ったらいいのか?」。
 とあちこちで電話をする声が聞こえた。

 スーパーでは早速、インスタントラーメンとミネラルウォーターの値段が急騰し始めた。
 品切れになる店も続出した。

 大手流通スーパーマーケットの調査によると、インスタントラーメンとミネラルウォーターの23日の売り上げは、前週同曜日比でそれぞれ44%、31%増えたという。延坪島から近い仁川松島店(筆者の仕事場がある地域)はラーメンの売り上げが2倍、ミネラルウォーターも77%増えた。

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著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

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