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反日デモの背景には何があったのか(後編)

中国政府のヤラセはあり得ない

2010年12月7日(火)

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前回から続く)

 前回、中国で起きた反日デモに対する「ヤラセ論」が根拠とした推論にはいくつかの共通点がある、と書いた。以下の3点だ。

(1)五中全会で次期国家主席の座を約束する軍事委員会副主席を選出することになっているので、習近平・国家副主席を選任すべく胡錦濤政権に圧力を加えるため、反胡錦濤側あるいは軍部側が仕掛けたものだ。

(2)その証拠に、デモの現場に居る警官はデモの経路を知っていてあらかじめそこに武装警官を配備していた。また警官は決してデモを強引に阻止しようとはせず、若者たちを見ているだけだった。

(3)08憲章の起草者である劉暁波がノーベル平和賞を受賞したので、それに対する国民の関心をそらすために政府が仕掛けたものだ。

 これらが、いずれもいかに的をはずした推論であるかを述べてきた。今回は(3)について述べる。

(3)に関して:
 もし「08憲章」が中国でそのような力を持っていると考えているとすれば、それは非常に大きな勘違いである。

 筆者は2010年11月12、1 3日と明治大学で特別公開講義を行なったが、会場には1週間ほど前に来日したばかりの、北京にある清華大学の元大学院生が出席していた。拙著『中国動漫新人類』で取材した、ナノテクを専攻していた張玉蛍である。彼は清華大学のナノテクという超エリートコースを放棄して来日した。動漫研究をして、動漫関係の日中交流的仕事をしたいからだという。

 この日、会場から反日デモに関連して「08憲章は中国ではどういう影響を若者に与えているのですか」という質問があった。
そこで筆者は「現在の若者は価値観が多様化しており、反日デモに参加するのはほんの一部分です。08憲章に関しては、ほとんどの若者が知らないというのが現状ではないかと思います」と答え、ついでに会場に居た清華大学の張宝蛍くんに「あなたはどう思いますか?」と尋ねた。

 すると、その張くんは携帯電話を覗きこんでいてなかなか答えない。答えを催促すると、彼は言ったものだ。
 「先生、すみません。その08憲章って、何ですか? ちょっと聞いたことがないので、今、急いで携帯電話で検索しているのですが、憲章という文字は懸賞ですか?」

 会場が笑いの渦に包まれたことは、言うまでもない。
 しかし、この程度なのである。これが中国の現実だ。

 従って、反政府デモに切り替わることを十分に承知している政府が、わざわざ、その危険を冒してまで、「08憲章」から目を背けさせることを目的としてヤラセの反日デモをけしかけるわけがない。必要性は皆無だ。

「08憲章なんて、若者は関心を持ってない」

 筆者は念のため政府高官に以上の3点に関して確認した。長年にわたって国務院西部開発弁公室人材開発法規組の人材開発顧問を仰せつかってきたため、その道の人脈はいやというほどある。そこで最も権威のあるランクの高官に尋ねたところ、3点とも筆者の見解を肯定してくれた上で「政府は絶対にヤラセてはいない!」と断言した。

 「そもそも、最近の若者が、政府の言うことを聞くと思いますか? もし素直に政府のヤラセに応じるようなら、中国政府は苦労しませんよ。今の若者たちは権利意識が強い。自分の天下だと思っている。だからこそ、政府は苦労してるんじゃないですか。まず圧倒的な発言力を持つ若い網民たちをなだめながらでないと、国際社会に立ち向かうことだってできないんだから、苦労しますよ、われわれも」と述懐したのである。

 ついでに「今回の反日デモは08憲章に対する関心をそらすためという分析をする日本人研究者が居るのですが、これについてはどう思われますか?」と聞いてみた。すると、こうした回答が返ってきた。

 「何を言ってるんですか! 冗談じゃない。08憲章なんて、若者は関心を持ってないし、知らない者の方が多い。若者が関心を持っているのは就職難とか住宅価格の高騰など、自分の身の回りの生活に関することで、デモの色合いがそちらにシフトするのをわれわれは最も恐れている。デモによる表現の自由はあるが、しかし、どんなデモでも歓迎はしない。理性的に表現するのはよいんだが…」。

「中国の対日外交を読み解く:カギは「網民」の民意」のバックナンバー

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「反日デモの背景には何があったのか(後編)」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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