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「トカゲの尻尾切り」臨時雇い労働者の悲哀

殴られ、連れ去られ、ぬかるみに放り出される立ち退き被害者

2010年12月17日(金)

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 中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」は2010年12月2日付の社説“毎週一評(毎週一評論)”に、論説委員の“範正偉”が執筆した「“臨時工”を“壁虎尾巴”にするな」という記事を掲載した。

 中国語の“臨時工”は日本語の「臨時工」と同じで臨時雇いの労働者を指すが、壁虎”は「トカゲ」、“尾巴”は「尻尾(しっぽ)」なので、“壁虎尾巴”は「トカゲの尻尾」を意味する。何か事が起こると、本来責任を負うべき関係当局は責任を回避し、その責任を正規職員ではない臨時工たちに押し付ける風潮が蔓延している。哀れな臨時工たちは責任を負わされて「トカゲの尻尾」として切り捨てられているのが実態だが、そんなことが許されてはならないというのが記事の論旨である。

蟻族、うさぎ小屋、そしてトカゲの尻尾切り

 12月6日付の米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、上記の記事を引用して、動物界が好きな中国メディアは、社会で苦悩する集団を動物にたとえて、2009年の流行語となった“蟻族”<注1>や“蝸居(うさぎ小屋のように狭い部屋)”に住む都市の中産階級を指す“蝸牛(かたつむり)”<注2>といった言葉を創出したが、「人民日報」は新たに「臨時工」に“壁虎尾巴”という言葉を生み出したと揶揄している。

<注1>“蟻族”とは「失業あるいは半失業状態で生活費の安い地域に群れを作って生活する大学卒業生集団」を意味する。本レポート2009年11月9日付『“蟻族”急増中、大学は出たけれど…』および2010年4月23日付『北京最大の“蟻族”集落はどこへ?』参照。
<注2> 本レポート2009年12月18日付『働けど、働けど「かたつむりの家」』参照。

 臨時工を“壁虎尾巴”と比喩したのは「人民日報」の“範正偉”であるが、これより早く臨時工が“替罪羊(スケープゴート)”になっていると問題を提起したのは、ハンドルネーム“丁丁”というブロガーだった。

 2010年11月18日付で“丁丁”は自身のブログに、「臨時工はいつスケープゴートの代名詞になったのか」という記事を掲載した。「人民日報」の社説は“丁丁”のブログの記事には言及していないが、前者には後者が取り上げた事例と同じ内容が書かれているから、恐らく“範正偉”は後者を念頭に社説を書いたに違いない。臨時工が“壁虎尾巴”として「トカゲの尻尾切り」をされている事例とはどのようなものなのか。原記事となった“丁丁”のブログと“範正偉”の社説で共通して取り上げられている事例を見てみよう。

殴る蹴るの暴行を加え、トラックで連れ去った

【事例1】
 2010年10月16日の夜、自転車修理を稼業とする李付俊は河南省鄭州市内の“人和路”と“航海路”の交差点近くに建つ作業小屋で寝ていた。41歳の李付俊は1991年に北京での出稼ぎ中に事故に遭い、両足の損傷で歩行困難となった身障者である。

 違法建築を理由として、作業小屋を10月16日の朝9時までに撤去するよう要求する命令書を、鄭州市二七区の“城市管理行政執法局(都市管理公務執行局)”から受領していた李付俊は、翌早朝に知人の援けを借りて撤去作業を行うべく準備し、その日は作業小屋に泊り込んでいたのだった。日付が変わった16日深夜0時過ぎに、グッスリ眠り込んでいた李付俊は物音で目を覚ました。4台の車に分乗した20人余りの男たちが作業小屋の扉を押し破って突然侵入し、寝ていた李付俊に殴る蹴るの暴行を加えた上で、1台のトラックに彼を放り込むと、トラックは走り始めた。

 李付俊を乗せた車は3時間ほど鄭州市内を走り回った後で人気のない場所で停車し、李付俊を車からゴミのように放り捨てると去って行った。歩行困難で身動きできない李付俊が辺りを見回すと、道端に“桜桃溝”と書かれた路標が立っていた。持っていた携帯電話で時間を確認すると、時間は3時20分。見知らぬ土地に投げ捨てられた李付俊は絶望の淵に立たされたが、運よく通りかかった人に助けられて、どうにか作業小屋に帰り着くと、作業小屋は跡形なく撤去されていた。

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「「トカゲの尻尾切り」臨時雇い労働者の悲哀」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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