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インドの農業を微生物が救う!?

化学肥料への依存は農業の持続性を押し下げる

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2010年12月22日(水)

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The friendly fungus

 その微生物は単体だと、顕微鏡を使わないと見ることができない。大きさは髪の毛の直径ほどだ。植物の根にコロニーを形成する性質を持っていることから「mycorrhiza(菌根)」という名が与えられている。「mycorrhiza」はギリシャ語で真菌と根を意味する。化学肥料や農薬の大量使用によって痛めつけられたインドの土地で、この菌根が再び増殖できるかどうか? 今や10億人を超えたインド国民の食料安全保障が、これにかかっている。

 菌根コロニーは、植物の根が、水やミネラルをより多く吸収するのを助ける。そして一部の栄養素を、植物が必要とする可溶型に変える。さらに、微生物を原因とする病気から植物を守る。一方、菌根は植物から炭水化物をもらう。

 しかし、インドでは化学肥料や殺虫剤を大量に使用してきたために、土壌1グラム当たり20~50個いた菌根菌胞子が半減している。つまり、土壌の肥沃度が下がり、農業生産高が減少しているのだ。

 1999年、KCPシュガー・アンド・インダストリーズのベラガプディ・マルシ・ラオ会長(当時)は、最初に問題の本質をとらえ、正しい結論を導き出した一人となった。インド南東部アンドラブラデシュ州のクリシュナ地区にあるKCP管理区域のサトウキビ農場では、灌漑が行き届いているにもかかわらず、それまで16トン以上あった1ヘクタール(1万平方メートル)当たりの収穫高が、12トンに減少していた。ラオ氏はその原因が化学物質にあると考え、土壌生産性を向上させるための方法を探し始めたのである。

求められているのは『常緑の革命』

 幸運なことにちょうどその年、タタ・エネルギー研究所(TERI、現在はエネルギー資源研究所)の菌根研究センターの科学者たちが、13年の研究の末に画期的な成果を上げた。彼らは、痩せた土地の半合成培地で菌根の培養に成功したのである。翌年TERIはその成果を商品化。KCPがその技術ライセンスの供与を最初に受けた。

 現在、KCPが管理する3万エーカー(1億2000万平方メートル)に及ぶ区域のサトウキビ農家が、粉末状で販売されている菌根の移植片を使用している。同時に化学肥料の使用を25%抑えた。これらの結果、サトウキビの収穫量は1ヘクタール当たり2トンほど増加した。砂糖の生産量も増加している。

 ラオ氏が直面した問題が現在インド国内に広がっている。いわゆるグリーンベルトの一部を形成している地域――パンジャブ州やハリヤナ州、ウッタルプラデシュ州西部――において、過去3年間に土地生産性が3~7%低下している。インド全体の土地生産性は、中国や米国などの他国、および世界平均に比べて非常に低い。

 インド国内の耕作地1億1400万ヘクタールに対して、年間4800万トンの化学肥料が使われている。その結果、化学物質が蓄積され、有用な土壌微生物を事実上死滅させている。M・S・スワミナサン研究財団のP・C・ケサバン氏は「数十年前に収穫高の上昇は止まってしまった。持続不可能な耕作法を取ったために収穫高の減少が始まった」と述べている。

 2025年までにインドの人口は15億人を超え、穀物需要は3億トンを超える――現在の生産高は2億トン。これは非常に憂慮すべき事態である。食料の供給を輸入に頼るつもりがないのであれば、インドは土壌生産性を飛躍的に向上させねばならない。ケサバン氏は「それ以上に重要な食料安全保障の問題はない」と言う。

 この状況はインドにとってデジャヴである。ケサバン氏によれば「1960年代に我々は今と同じような状況に直面した。そのときは『緑の革命』によって生産高が向上し、助かった。だが、それは代償を伴った」。その結果、肥料や農薬の大量使用が始まり、長期的に土壌を傷つけることになった。同氏は「今の我々に必要なのは『常緑の革命』だ。環境に害を与えることなく、土地の生産性を恒久的に向上させなければならない」と続ける。

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