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“蟻族”に続いて“鼠族”が出現

防空壕を改造した地下室に居住する低所得者の群れ

2011年1月7日(金)

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 2010年12月17日、中国のネットメディアの多くが、「給与が低い大卒者、夜間のゴミ拾いで寒さに失神」という表題で次のような記事を掲載した:

 2010年12月15日の夜11時頃、江蘇省南京市の鼓楼区を巡回していた同区の“城管行政執法大隊(都市公務執行大隊)”の趙隊員は、湖南路185号にある“招商銀行”の前を通り過ぎようとして銀行入口の門柱の陰に何かがいるのに気付いた。立ち止まって良く見ると、この寒空に薄着でメガネをかけた学生風の若い男が倒れていた。男の傍らにはずだ袋があり、その開いた口から中には飲料の空き缶やペットボトルが入っているのが見て取れた。

 男はと見ると、顔面蒼白で唇を噛みしめている。何かあったら困ると、趙隊員は男に声をかけたが、何度呼びかけても男は反応しない。そこで、警察に電話を入れると同時に、程近くにある大隊の事務所へ電話を入れて同僚の1人に来てもらい、2人で男を事務所まで運び込んだ。事務所に到着してから、趙隊員が熱い砂糖水を作って飲ませると、男はようやく意識を取り戻して、「どうしてここにいるの」と不審げに訊ねてきた。趙隊員が経緯を説明すると、男は非常に動揺した様子ながら何度も感謝の言葉を繰り返した。

 男が落ち着くのを待って趙隊員が事情を聞くと、男は次のように答えた:

夜間もゴミ拾いをして生活費を稼いでいる

 今年大学を卒業し、苦労して南京で仕事を見つけたが、1カ月の給与は1000元(約1万3000円)余り。これでは生活できないので、昼間に出勤するだけでなく、夜間もゴミ拾いをして多少の生活費を稼いでいる。この数日は風邪をひいてしまい、懐に金はほとんどなく、家賃の支払い時期も迫っているので、今夜は無理してゴミ拾いに出た。ところが、このところ気温は下がり続けており、着ている物も少ないので適応できずに意識が薄れ、銀行の門柱にもたれて一休みしようとしたまでは覚えているが、その後のことは記憶がない。

 警察に事情聴取された男は、卒業した大学の名前も言いたくないし、家族や友人にも事件を知られたくないと答え、「面目なくて、身の置き所がない」と言い残すと、ずだ袋を持ってこっそり立ち去ったのだった。

 2009年10月26日に北京大学の博士研究員である“廉思”が出版した書籍『蟻族:大学卒業生が集まり住む村の実録』(陝西師範大学出版社刊)は、“蟻族”という新語を生み出した。(2009年11月6日付本リポート「蟻族”急増中、大学は出たけれど…」参照)“蟻族”とは、大学を卒業したのにまともな就職ができず、臨時雇いの仕事に就いているか、失業あるいは半失業の状態にあり、平均月収が2000元(約2万6000円)未満で、大中都市の都市部と農村部の結合部分にある“城中村(都市化に立ち遅れて生活水準が低い「都市の中の村」)”に集まって暮らしている人々を指す。廉思は2009年当時、“蟻族”は全国の大中都市に分布し、北京だけで10万人以上、全国では100万人以上と推定していた。

“蟻族”に占める大卒比率は49.8%へ増大

 『蟻族』の出版から1年が経過し、今では“対外経済貿易大学”教授に転身している廉思は2010年12月1日に続編の『蟻族II:誰の時代」(中信出版社刊)を出版した。前作の『蟻族』は北京の“城中村”である“唐家嶺”に焦点を当てた調査の報告書であったが、今回の『蟻族II』は赤表紙に320ページの大冊で、本の帯には「第1回全国“蟻族”大調査、2010年“蟻族”生存報告」と銘打ってある。その内容は、「村の二代目」と「都市の二代目」との対話実録、“蟻族”およびその調査研究者並びに学者による多岐にわたる論述、さらに実地調査報告で構成されている。

 実地調査は北京、上海、広州、武漢、西安、重慶、南京の7大都市を対象地域に設定し、2010年3月から8月までの半年間で5000人以上にアンケート調査を行って4807人から有効回答を得たもので、その分析結果が報告の内容である。

『蟻族II』の報告の要点は次の通り:

コメント4件コメント/レビュー

中国は徹底した資本主義競争社会である証左ということでしょう。貧富の差は危険水域に入りつつあると思います。中国政府の強硬対外政策や反日キャンペーンなども、このような国内に抱える不安定要素のなせる技(ガス抜き)と考えた方が判りやすい。ただ、このような矛盾を抱えたまま、それでも当分の間(たぶん10年ぐらいは)高度成長期が続くと思います。中国の経済は、日本が辿った跡を、なぞっているようで興味深い。ただし、そのスピードは日本の倍以上。したがって歪もその分大きい。そしてその歪は底辺に集中する。農村問題、地方政府の腐敗と並んで中国最大の課題と言える。(愚痩子)(2011/01/11)

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「“蟻族”に続いて“鼠族”が出現」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中国は徹底した資本主義競争社会である証左ということでしょう。貧富の差は危険水域に入りつつあると思います。中国政府の強硬対外政策や反日キャンペーンなども、このような国内に抱える不安定要素のなせる技(ガス抜き)と考えた方が判りやすい。ただ、このような矛盾を抱えたまま、それでも当分の間(たぶん10年ぐらいは)高度成長期が続くと思います。中国の経済は、日本が辿った跡を、なぞっているようで興味深い。ただし、そのスピードは日本の倍以上。したがって歪もその分大きい。そしてその歪は底辺に集中する。農村問題、地方政府の腐敗と並んで中国最大の課題と言える。(愚痩子)(2011/01/11)

末は博士か大臣かと一族の誉れと言われた若者が鼠族に転落。悲しい現実ですが、中国では直轄都市や省都の都市住民の選別が始まっています。それは、現在内需拡大策の為に検討されている、郊外にあった1000にも及ぶ2級都市の発展に、ホワイトカラー層が不可欠だからですが、同時に直轄都市のドーナツ化(各都市の巨大環状線建設と衛星都市の開発)も推進されています。直轄都市には当然国家重点大学が集中していますから、田舎に戻ったり移住したくない大卒者が、大都市の貧困層に転落する事態となっています。冷え込む世界経済牽引の為に中国の内需拡大が不可欠ですが、その為に、中国の若者が、夢と現実と面子に折り合いをつけなくてはならない局面を迫られています。余談ですが、最近は211工程大学から985工程大学に重点大学がシフトしてきています。(上海から)(2011/01/07)

俄かには信じがたい話ですね。これが世界第2位の経済大国になろうという国の話なのでしょうか?明暗が深すぎて、何が真実なのかわかりかねます。(2011/01/07)

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三品 和広 神戸大学教授